くすりの話

2019年7月5日

くすりの話 
点滴

執筆/岩本 忍(岡山協立病院・薬剤師)
監修/高田 満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた薬の質問に、薬剤師がお答えします。
 今回は点滴についてです。

 いよいよ暑い夏を迎えます。みなさんの中には熱中症などで体調を崩した際に、点滴をしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
 私たちの身体の大部分は水分で構成されており、その割合は小児は体重の70~80%、成人は60%、高齢者は50%と言われています。
 また、身体の中の水分には、ナトリウムやカリウム、マグネシウムなどたくさんの種類の電解質が存在しています。電解質とは水に溶けると電気を通す物質のことで、血圧や尿量の調節、心臓や筋肉の動きなど、生命維持に重要な役割を担っています。
 水や電解質は通常、食べ物や飲み物を摂取することで身体に取り込まれ、ほぼ同じ量が体外に排泄されるので、体内には一定の量が保たれています。しかし下痢や嘔吐、炎天下で多量の汗をかくなど、何らかの原因で身体に取り込む量より体外に排泄される量が上回ってしまうと、身体のさまざまな働きに影響を及ぼし、生命に関わることもあります。
 点滴によって直ちに水と電解質を補充し、バランスを整えて身体の働きを正常に戻す必要があるわけです。
症状に応じて
 何らかの理由で長期間食事がとれなければ、水や電解質のほか、身体に必要なたくさんの栄養素が不足してしまいます。こうした時に糖質やたんぱく質、脂肪やビタミンなどの栄養素が含まれた点滴を使うこともあります。ただし、1度にあまりにも多くの栄養を入れようとすると、血管に負担がかかり炎症を起こしてしまいます。その場合は、鎖骨の下などの太い血管から点滴を入れる方法があります。このほか、病気を治療するための薬剤を点滴に混ぜて使用することもあります。
 点滴は水分の量、電解質の種類と量、栄養素の種類と量の組み合わせを変えて、たくさんの製剤が作られています。どれを選択するかは、症状と既往歴を踏まえて判断されます。たとえば、腎障害の既往がある方には、体内のカリウムが多くなりすぎないように注意が必要です。糖尿病の方には、血糖値が上昇しにくい糖質を用いることもあります。
 点滴中は医師や看護師の指示に従って安静にしつつ、もし異常を感じたらすぐに伝えてください。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2019.7 No.333

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