いつでも元気

2019年8月9日

まちのチカラ・東京都新島村 
青い海と白い砂浜 美しき2つの島

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

島の玄関口にある黒根海岸。遠浅の白砂ビーチで、桟橋では釣りも楽しめる(新島観光協会提供)

島の玄関口にある黒根海岸。遠浅の白砂ビーチで、桟橋では釣りも楽しめる(新島観光協会提供)

 都心から南へ約160km。
 伊豆諸島の新島村は、白い砂浜が輝く新島と自然あふれる式根島の2島からなります。
 温暖な気候から“常春の島”と言われ、温泉やビーチなど観光業が盛んです。
 自然の恵みをたっぷりと蓄えた癒しの島を訪ねました。

 東京都港区、JR浜松町駅近くの竹芝桟橋から高速船で約2時間半、新島に到着しました。港に着くと、民宿の車が迎えに来てくれるのが島のおもてなし。宿のオーナーとのおしゃべりから旅が始まります。
 島の玄関口には「黒根海岸」があり、島の東側には有名な「羽伏浦海岸」が広がります。約7kmに渡る遠浅の海岸の先には、むき出しの真っ白な絶壁「白ママ断崖」が。白砂に目が奪われますが、よく見るとただの砂ではなく透明の粒でできているのが分かります。石英の結晶が多く、手に取るとキラキラ光り、青い海とのコントラストに心躍ります。

むき出しの真っ白な岩肌、白ママ断崖

むき出しの真っ白な岩肌、白ママ断崖

コーガ石の島

 新島は世界的にも珍しい白く柔らかな「コーガ石」(抗火石)でできています。約20もの火山が噴火し現在の島を形成する過程で生まれた天然石で、新島とイタリアのリパリ島でしか採掘されません。強くて丈夫、なのに軽くて扱いやすいことから、神社や塀、民家まであらゆるところにコーガ石でできた石の町並みが残っています。
 渋谷の待ち合わせスポットとして知られるモヤイ像も、このコーガ石で造られ新島から寄贈されたもの。島内には約100基ものモヤイ像が点在。「もやい」とは新島の方言で「力を合わせる」という意味で、今も使われています。新島ガイドの植松正光さんが「一緒に協力してやろうというときに、『○○をもやいでやろうじゃ』と言うんですよ」と教えてくれました。

モヤイ像は新島観光協会元会長の大後友市さん(故人)が発案した

モヤイ像は新島観光協会元会長の大後友市さん(故人)が発案した

世界のガラスアート

 特産のコーガ石は「ガラスの島 Niijima」として、新島の名を世界に知らしめました。コーガ石は大部分がガラスの原料となる石英でできているため、高熱で溶かすと含有する鉄分などと融合してオリーブグリーン色のガラスに生まれ変わります。火山石から生まれたとは思えない、優しい色合いが魅力の「新島ガラス」です。
 「新島ガラスアートセンター」は毎年秋に国際ガラスアートフェスティバルを開催、海外から有名な作家が来島します。隣接する新島現代ガラスアートミュージアムでは、国内外のガラス作家の作品を見ることができます。
 夫婦で新島ガラスを島の新たな文化として確立させた野田由美子さんが、施設を案内してくれました。「この32年間で15人の若者がスタッフを卒業。約80人が新島スカラーシップを受賞し、ガラス作家として国内外で活躍していることが喜びです。これからも国際交流の輪を広げていきたい」と野田さん。
 1400度に熱したガラスを巧みに操る野田さんの達人技は、息を飲むほどの美しさ。工房では若手作家の手ほどきのもと、誰でも気軽に吹きガラスなどの体験ができます。島を訪れた記念に、オリジナル作品を作ってみてはいかがですか。

島の自然に溶け込む素朴な色合いの新島ガラス

島の自然に溶け込む素朴な色合いの新島ガラス

リアス式海岸の式根島

 約2200人が暮らす新島の南西には、人口500人の式根島があります。2つの島をつなぐのは、片道約10分の連絡船にしき。毎日3便の運行で、高校のない式根島から新島高校に通う高校生の通学姿もあります。
 式根島には4つの海水浴場「泊」「大浦」「中の浦」「石白川」があり、波の穏やかなリアス式海岸が特徴的です。透明度抜群の美しい青が広がる入り江で、さまざまな海の生物に出会えます。
 島の周囲は12kmほどで、ゆっくり半日も歩けば一周できるほどの大きさ。島内にはハイキングルートもあり、心地よい森林浴をしながら散策も楽しめます。どこを歩いても海からの潮風が通り抜け、大自然の息吹をのんびりと味わわせてくれます。

海に湧く隠し湯

 式根島に潮の満ち干きで出現する珍しい海中温泉があると聞き、湯加減を確かめに行きました。「地鉈温泉」は、岩山を鉈で割ったような地形の絶景温泉です。神経痛や冷え症に効果があるため、別名「内科の湯」と言われます。一方、「足付温泉」はきり傷やすり傷などに効果があり、「外科の湯」と呼ばれます。
 島内の海岸には24時間無料で入ることのできる天然温泉がいくつかあり、その時の湯量や温度、海水の流入具合によって湯巡りが楽しめます。取材した日、足付温泉が熱過ぎて入るのを躊躇していると、30mほど陸に上がった場所から人の声が聞こえてきました。
 地元の男性が石をごろんと動かして湯船を手作りし、海との境界線に浸かる観光客の姿が。さらに、膝を擦りむいた地元の若い男性、岩場で転倒したというダイバーが外科の湯を求めてやってきました。
 その後、10分もしないうちに波がどんどん押し寄せて来ました。水位が上がるとさらに陸側へ、そこに居合わせた皆で協力して湯船を作ります。このダイナミックな野天風呂を体験するだけでも、来島の価値ありです。

海のすぐそばにある足付温泉

海のすぐそばにある足付温泉

島宿とキャンプ

 両島とも島民の多くは観光業に携わっています。宿は「島宿」と言われる民宿タイプが多いのが特徴。式根島で宿泊先の女将さんが説明してくれました。
 「私が子どもの頃、石白川海水浴場はキャンプに来る若者で溢れていました。でも、キャンプじゃ雨が降ったときに大変でしょ。よくおばあちゃんが『うちに来いよ』と言って、泊めてあげたんですよ」。こうした風習が島宿の始まりだと言われています。
 島宿とは違う新しいタイプの宿泊施設「凪NAGIグランピング」が、昨年オープンしました。グランピングとは、グラマラス(魅惑的な)とキャンピングを合わせた造語。豪華な設備のテントで、手ぶらで快適に自然を楽しめるキャンプのことです。
 式根島出身の前田安彦さんが、2年をかけて自力で山を切り開き、流行の施設を作りました。「自然にできるだけ近い形で、雨も風も式根島の自然をそのまま感じてもらいたい」と語ります。
 式根島も新島も、小さな子ども連れやシニア世代にもおすすめのマリンスポットです。お盆には重要無形民俗文化財の「大踊」など独特の風習も。ぜひ今夏、離島の海でゆったりと過ごしてみてはいかがでしょうか。

■次回は熊本県小国町です


まちのデータ

人口
2,722人(1月1日現在)
おすすめの特産品
くさや、明日葉、新島ガラス
アクセス
竹芝桟橋から高速船で約2時間半、大型船で8時間半。下田港から大型船で3時間。調布飛行場から小型機で35分
連絡先
新島観光協会 04992-5-0001
式根島観光協会 04992-7-0170

いつでも元気 2019.8 No.334

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