MIN-IRENトピックス

2019年9月5日

くすりの話 
トクホ(特定健康保健用食品)

執筆/藤竿 伊知郎(外苑企画商事・薬剤師)
監修/高田 満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた薬の質問に、薬剤師がお答えします。
 今回はトクホ(特定保健用食品)についてです。

 トクホ(特定保健用食品)は、お腹の調子を整えるなどの機能をもつ食品で、消費者庁が審査して表示を許可したものです。血圧や血中のコレステロールを正常に保つことを助け、生活習慣病の予防に役立つことも期待されています。
 トクホは1991年に制度ができ、2007年には6798億円の市場規模まで急成長しました。ところが2009年、「体脂肪がつかない」と謳っていた「健康エコナ クッキングオイル」に発がん性物質が含まれていると指摘され、販売中止に。2011年までトクホの販売額は減少しました。
 その後、脂肪吸収を抑える清涼飲料水の発売で市場規模は6000億円台半ばまで盛り返しましたが、ここ数年は横ばいです。乳酸菌やオリゴ糖、食物繊維など整腸機能を持つ食品がずっと人気を保っており、6月末現在で1065品目が表示許可を受けています。

発売後の管理に問題

 臨床試験のデータに基づいて有効性と安全性を審査したトクホは、「健康食品」の中では優良な製品です。しかしトクホの効果は医薬品と比べて弱いもので、病気を治すような効果があるわけではありません。
 審査で表示不許可となった製品もあり、許可するまでは十分にチェックしていますが、発売後の管理には問題があります。2016年9月、消費者庁が「ペプチド茶」など6商品の表示許可を取り消しました。有効成分が表示の100分の1程度しか含まれておらず、それが判明した後2年以上も報告せずに販売を続けていたためです。
 消費者庁が業界団体に含有量の点検を指示したところ、許可を受けていた1271品目中903品目(71%)は既に販売されておらず、全く管理できていなかったことも明らかになりました。
 もう一つの問題は、医薬品のような再評価の機会がないことです。1997年の規制緩和で4年の有効期間がなくなり、再審査の機会はなくなりました。ペプチド茶の成分「かつお節オリゴペプチド」について、「自然の血圧をサポート」と表示する許可を求めた申請が欧州食品安全機関に却下されています。ヒトへの有効性に十分な根拠がないと評価されたためです。承認から十数年経った製品は、現在の科学水準で効能を見直す必要があります。
 また、副作用報告の収集と安全性情報の伝達も不十分です。そのため、副作用による健康被害の実態は医療従事者にも把握できていないのが現状です。
 「病気にならないように食事を充実したいが難しい」「値段は少し高いがトクホを飲んで健康を保とう」と思う方は多いでしょう。利用にあたっては、広告の体験談につられるのではなく、きちんとした情報収集を心がけてください。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2019.9 No.335

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