いつでも元気

2019年11月8日

女性の権利を学ぶ 
グアテマラ

安田菜津紀

 中米のグアテマラは、国土の多くを高地が占めます。みずみずしい山々に囲まれた村で、人々はコーヒーやトウモロコシなどを栽培しながら、静かな暮らしを営んでいます。ただ農村地帯は保守的なコミュニティーが多く、中米に根強く残る「マチスモ」という男性優位の価値観が、女性の社会進出の壁となってきました。
 取材を進める中で、「女の子がなぜ学校に行くんだ」「学校に行くのは彼氏を作るためだろう」と、父親から反対されたという声を度々耳にしました。
 たとえ学校に通えたとしても性教育を公に行うことが難しいため、生理がきた少女たちは自分の身に何が起きたのか分からず、戸惑って家にこもってしまうこともあります。さらには「生理がきたらお風呂に入ってはいけない」という誤った知識を、信じてしまうこともあるそうです。
 「『血が出ていることがばれたら大変』と学校を休む子ややめてしまう子さえいたんです」。首都グアテマラシティから車で7時間ほど離れたアルタ・ベラパス県に暮らすエリダさん(13歳)は、農村部に暮らす女性が知識を得ることの難しさを語ります。
 エリダさんは国際NGO「プラン・インターナショナル」の活動に参加、ジェンダーや人権について学びました。活動に参加したのは、母親の後押しもありました。「母は全く面識のない人と早くに結婚させられたんです。同じ思いを娘にしてほしくないから、勉強を続けてほしいという強い気持ちがありました」。
 NGOの活動を通じて、自分には学ぶ権利があり女性が意思表示をしてもいいのだということを知って、少しずつ活動的になっていきました。「女の子は以前、参加さえしていなかった」という地域のサッカーチームに所属し、エリダさんはゴールキーパーを務めています。
 ただ、女性たちだけが変わっても、根本的な環境は変わりません。「父も私たちの説得に応じて、プラン・インターナショナルが主催する研修を受けてくれました。以前は学校に行くことを反対したり、家にいるとお酒ばかりの父でしたが少しずつ理解を示してくれるようになりました」。
 エリダさんは将来、心理療法士になって、性暴力の被害を受けた子どもの心のケアをしたいと考えています。根強く残る偏見の壁を取り除くことは、決して容易なことではありません。それでも彼女たちが得た学びの“種”は、彼女たちの心で、家庭の中で、そしてコミュニティーの中で少しずつ花開いているのです。

プラン・インターナショナルの活動で、女の子たちに配られた生理用キット。手に取りやすいようデザインや色使いもかわいらしいものになっている

プラン・インターナショナルの活動で、女の子たちに配られた生理用キット。手に取りやすいようデザインや色使いもかわいらしいものになっている


安田菜津紀(やすだ・なつき)
フォトジャーナリスト。1987年、神奈川県生まれ。上智大卒。東南アジア、中東、アフリカなどで貧困や難民問題などを取材。サンデーモーニング(TBS系)コメンテーター。著書・共著に『写真で伝える仕事~世界の子どもたちと向き合って』(日本写真企画)『しあわせの牛乳』(ポプラ社)など

いつでも元気 2019.11 No.337

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