MIN-IRENトピックス

2020年2月28日

くすりの話 
「隠れ多剤服用」の危険性(上)

執筆/藤竿 伊知郎(外苑企画商事・薬剤師)
監修/高田 満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた薬の質問に、薬剤師がお答えします。
 今回と次回でサプリメントによる「隠れ多剤服用」の危険性について取り上げます。

 「6種類以上の薬を飲んでいると副作用が増える」と聞いたことがあるでしょうか。このような「多剤服用」の改善を提案する日本老年医学会の働きかけもあり、ここ数年は医療従事者だけでなく多くの人に意識されるようになっています。
 昨年10月22日に放送された「NHKクローズアップ現代+」は、あらためて多剤服用に注意を呼びかけました。番組では、12種類の薬を服用していた高齢者が倒れて寝たきりになったり、多剤服用による副作用で認知症と誤診されてしまうケースを紹介しました。さらに、健康食品やサプリメントを薬に追加して飲むことで、サプリメントによる「隠れ多剤服用」が起き、副作用の危険性が高まる可能性も指摘したのです。
 この後、週刊誌が「薬とサプリ この組み合わせが危ない」といった特集を組み、健康食品との飲み合わせで「大変な目に遭うかもしれない」と警鐘を鳴らしています。自分が服用している薬と健康食品の組み合わせが危険と書かれ、不安になった方も多いでしょう。

何が大事かを見極める

 歳をとると、薬を代謝する肝臓や排泄する腎臓の機能が衰えて、副作用が出やすくなります。それに加えて、内科だけでなく整形外科や皮膚科など複数の医療機関にかかる機会も増え、処方薬が何種類にも増えてしまいがちです。
 7種類以上の薬をもらう人の割合は64歳以下で10%ですが、75歳以上になると24%に増加します。NHKの番組では「薬の代謝・排泄機能にはかなり個人差がありますので、2種類でも問題が起きる人もいますし、10種類でも大丈夫という人もいます」とことわりながら、「すべての症状を改善しようと薬を増やすのではなく、その患者さんの状態の何が大事なのかを見極める」ことを提案していました。

本当の「健康不安」解消を

 民医連の事業所では、薬剤師も入ったチームで薬物治療を評価し改善する実践をおこなってきました。患者さんが追加服用したサプリメントで健康を害する状況は見過ごせません。
 サプリメントを飲むきっかけは、「なんとなく体調不良」「治療をしても回復が思わしくない」と感じるときが多いようです。症状の緩和や病気の不安解消に、「不調を治せる」と宣伝する商品を次々と試すことになりがちです。
 しかし、サプリメントには効果がないものが多く、飲んでも不安が解消せず、飲む種類がさらに増えることにもつながります。前述した副作用や飲み合わせもさることながら、「健康不安」によって体調を一層悪くしていることが問題です。
 健康不安を商品購入で解決しようとするのではなく、相談できる専門家を見つけることや、病気に対するきちんとした知識を得ることが大切です。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2020.3 No.341

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