くすりの話

2020年10月30日

くすりの話 
糖尿病の薬

執筆/加藤 志保(メディカプラン京都 すこやか薬局・薬剤師)
監修/高田 満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた薬の質問に、
 薬剤師がお答えします。
 今回は糖尿病の薬についてです。

 私たちが食事をすると、栄養素の一部は糖となって吸収されます。糖は膵臓から分泌されるインスリンの働きによって、肝臓・筋肉・脂肪細胞へ取り込まれ、血液中の糖の濃度は一定に保たれます。糖尿病はこのインスリンの働きが十分でないために、慢性的に血糖値が高くなる病気です。

飲み薬

 糖尿病の薬には飲み薬と注射薬の2種類あります。糖尿病の飲み薬は作用の点から(1)インスリンの分泌を促す薬、(2)インスリンを効きやすくする薬、(3)糖の吸収や排せつを調節する薬に分類されます。それぞれの薬について、服用する際の注意点があります。

(1)インスリンの分泌を促す薬
 スルホニル尿素薬は最も歴史が古いものです。血糖降下作用が強く、副作用としての低血糖に注意する必要があります。速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)は服用後すぐに効果が出るため、必ず食直前に飲まなければなりません。DPP-4阻害薬は低血糖を起こしにくいとされますが、スルホニル尿素薬などとの併用で重篤な低血糖を起こすことがあります。肝障害や腎障害のある方には注意が必要な薬です。

(2)インスリンを効きやすくする薬
 ビグアナイド薬は腎機能が低下した方に重大な副作用が起こる恐れがあるため、定期的に腎機能の検査が必要です。チアゾリジン薬は浮腫や心不全などに注意が必要です。

(3)糖の吸収や排せつを調節する薬
 αグルコシダーゼ阻害薬は糖の吸収を遅らせて食後の高血糖を改善するために食直前に服用します。SGLT2阻害薬は尿中に過剰な糖を排せつする薬です。脱水に注意が必要で、十分な水分摂取を心がけます。

注射薬

 糖尿病の注射薬は次の2つに分類されます。
 インスリン製剤は体内にインスリンそのものを補う注射薬です。作用の速さや持続の仕方に応じて、5種類(超速効型、速効型、中間型、持効型、混合型)があります。使用法や保管の仕方、打つタイミングについては使用前にしっかり指導を受けてください。
 GLP1受容体作動薬は体内に血糖値を下げるホルモンを補う注射薬です。週1回投与の場合もありますし、最近は内服薬も発売されました。
 糖尿病の薬にはさまざまな種類があり、それぞれ服用上の注意点も違います。詳しくは薬剤師におたずねください。あわせてシックデイ(発熱や下痢、感染症などで食事ができない時)の服薬・注射について、普段から主治医と話し合っておきましょう。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2020.11 No.348

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ