MIN-IRENトピックス

2020年11月30日

くすりの話 
薬を飲む時間帯

執筆/石井 亮(愛媛・新居浜協立病院・薬剤師)
監修/高田 満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた薬の質問に、薬剤師がお答えします。
 今回は薬を飲む時間帯についてです。

 薬はそれぞれ「食前」「食後」「食間」など飲む時間帯が決まっています。
 食前とはご飯を食べるおよそ30分前、食後とはおよそ30分後を言います。食間とは食事をしている最中と思われる方もいるかもしれませんが、「食事と食事の間」のこと。一般的には食後2時間を指し、空腹時とほぼ同じ意味です。
 薬を飲む時間帯は、薬の性質や効能、副作用などを考慮して決められます。例えば吐き気止めは、その効能から食前に飲む必要があります。また胃腸を荒らす副作用がある薬の場合、食直後に飲むことが多いです。
 なかには、糖尿病の薬で食直前に服用する「α-グルコシダーゼ阻害薬」(セイブル、ベイスンなど)のように、その時間帯でないと十分に効果が発揮されない薬もあります。これは食後の血糖値の急上昇を抑えるための薬で、食直前とは食事を目の前にしてお箸を持つ直前くらいのことです。
 ほかに骨粗鬆症の薬で骨を溶かす細胞の働きを抑えるビスホスホネート系薬剤(ボナロン、ボノテオなど)は、起床時に十分な量の水で服用し、その後30分間身体を起こし、水以外のものを口にしないことになっています。この薬はほかの薬や飲食物と相互作用があり、食道などにつくとそこが潰瘍になってしまうことがあるので、胃まで落とす必要があるためです。

ライフスタイルに合わせて

 薬を飲む時間帯は、薬がより効果的に安全に効くように決められているものですので、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。ただ、実際には食後に飲む薬を食前に飲んでも、あまり効き目に違いがないことも多いのです。食後より食前のほうが忘れずに飲めるという方は、その薬が食前でも効果や安全性に問題がないか聞いてみてもいいでしょう。
 薬を飲み忘れた場合、一般的には思い出した時に服用するように勧めています。しかし次の服用時間に近い場合、1回分は飛ばす必要があります。飲み忘れたからといって、次の服用時に2回分をまとめて飲むことは絶対にしてはいけません。
 一番大事なのは薬を飲み忘れないようにして、効果的に治療すること。そのためにも、一人ひとりのライフスタイルに合わせた服用方法を考えることが重要です。昼は仕事でつい飲み忘れてしまう方は、1日3回の薬よりも1日2回(朝・夕)のほうが合っています。ご自身で薬を管理しづらい方は1日1回、家族がいる朝の時間帯に服用できるように工夫する必要があるかもしれません。気軽に医師や薬剤師に相談してみてください。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2020.12 No.349

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