くすりの話

2021年11月30日

くすりの話

執筆/佐生 明雄(北海道・室蘭ひまわり薬局・薬剤師)
監修/高田 満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた薬の質問に薬剤師がお答えします。
 今回は漢方薬についてです。

Q:漢方薬とはどのようなものですか?
A:天然の植物や鉱物などの素材を一定の割合で配合して作られた薬です。民間薬とは異なり、漢方理論に基づいて処方されます。現在、約140種類の漢方エキス製剤に保険が適用されます。
Q:漢方薬と西洋薬の違いは?
A:いわゆる新薬(西洋薬)の多くは1つの成分から作られ、高血圧や糖尿病など1つの病気に対して効果があります。漢方薬は体質や諸症状に対して処方するため、1種類の漢方薬がさまざまな症状に対応できます。
Q:漢方薬が得意とする症状や悩みは?
A:虚弱体質の改善、胃もたれや食欲不振など胃腸の衰え、イライラや不眠などの神経症状、アレルギー疾患や冷え症、腰痛など加齢にともなう症状、更年期症状などです。
Q:漢方薬に副作用はありますか?
A:漢方薬も薬なので、副作用が起きる場合があります。胃腸障害などの消化器症状が多く見られるようですが、過敏症も起こりうるので注意が必要です。妊娠中は控えたほうがいいものもあります。
Q:西洋薬との併用で注意すべきことはありますか?
A:甘草と一部の利尿薬との併用で「偽アルドステロン症」による浮腫や高血圧などが現れることがあります。
 また麻黄はエフェドリン類を含み中枢興奮作用があるため、高血圧や狭心症の方が長期にわたって服用する場合は注意が必要です。定期的な血液検査をお勧めします。
 最後に、身体の症状に応じた漢方薬の処方例をまとめました。自分に合う漢方薬を見つけるのには時間がかかると思いますが、諦めずじっくりと医師や薬剤師に相談してみてください。

〈便秘〉
まずは麻子仁丸もしくは潤腸湯、効果が弱ければ大黄甘草湯。
さらにスッキリしたい時は調胃承気湯など。
痛みがある時には桂枝加芍薬大黄湯。

〈不眠〉
まずは加味帰脾湯もしくは酸棗仁湯。
興奮して神経が高ぶる場合は抑肝散。
顔がほてり気味でイライラする場合は黄連解毒湯など。

〈かぜ・インフルエンザの諸症状〉
予防/体力増強に補中益気湯。飲めなければ小柴胡湯など。
ひき始め/関節痛に麻黄湯。首の後ろがこわばるなら葛根湯。
鼻炎には麻黄附子細辛湯。胃が弱ければ香蘇散など。
長引く場合/食欲も低下し咳や痰を伴う場合には小柴胡湯。
倦怠感がある場合には柴胡桂枝湯。
微熱や咳が続き心配な時には竹?温胆湯。
胃が弱い方には参蘇飲。
倦怠感、食欲不振、微熱がある場合は補中益気湯など。

〈フレイルの改善〉
気力、食欲がない場合は補中益気湯。
貧血気味な場合は十全大補湯など。
手足のほてりや口が渇く、疲れやすい、排尿障害、腰痛などがある場合は六味地黄丸。
腰が痛む、足の冷えや口内乾燥、疲れやすい、尿量減少、夜間多尿、むくみなどがある場合は八味地黄丸など。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2021.12 No.361

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