くすりの話

2022年10月31日

くすりの話 
マスクによる皮膚トラブル

執筆/中西 剛明(石川・金沢医療事業協同組合・管理薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた薬の質問に薬剤師がお答えします。
 今回はマスクによる皮膚トラブルについてです。

 コロナ禍のもと長引くマスク着用で、肌荒れやかゆみなどの皮膚トラブルを抱えている方はいませんか。
 マスクによる皮膚トラブルは、そのほとんどがマスクが皮膚に触れて傷つくことで起きる接触性皮膚炎です。マスクが肌にこすれて、皮膚を守っている表面の脂分が取れ、同時に肌の水分が奪われて乾燥してしまいます。その結果、肌の表面が傷つきやすくなるのです。
 唇をはじめ顔の皮膚は再生力が高いので、たいていは皮膚を保護すれば解決します。最近の不織布マスクは、コーティングなどによって肌荒れが起きにくいように工夫されています。自分の肌に合ったマスクを選ぶことが最優先です。薬を使う場合、以下を参考にしてください。

◎ワセリンが主成分の製品

 ワセリンの役割は、皮膚を油の膜で保護することです。たくさんの種類があり、入手しやすいですし、最も安全です。代表的なものはリップクリームです。持ち運びが簡単で便利ですが、色やにおいが気になる人がいるかもしれません。ややベトベトすることや、マスクが汚れやすくなるのも弱点です。
 水分を多く含むクリーム状の塗り薬もあります。非常になめらかですが、汗などで流れやすいのが欠点です。成分表示は配合量の多い順に書かれていますので、自分の肌に合うものを選ぶ参考にしてください。

◎亜鉛華軟膏

 肌が真っ赤になってひりひりするような時にお勧めです。昔からおむつかぶれに使われていました。肌に強力にくっつくので肌を守る効果は抜群です。乾燥させる働きが強いので、使い続けるとかえってカサカサになってしまいます。ひりひりしなくなったらワセリンに切り替えたほうが良いでしょう。

◎ヘパリン類似物質を主成分とする製品

 保湿剤として、近年よく使われるようになった製品です。市販薬でも手に入りますが、非常に高額です。なめらかなクリームですが、血行も良くなるので、塗ってしばらくすると違和感が生じることもあります。

◇お勧めできない薬

 飲み薬は体の内部に原因がある場合や、全身にトラブルが起きている時に使います。また尿素クリームは、かたくなった皮膚をやわらかくする目的で使うものです。どちらもマスクによる皮膚トラブルには適しません。ステロイドは一部の市販薬に含まれていますが、ほとんどが医師の処方箋でしか入手できません。症状がひどい場合には皮膚科を受診して、医師の診断を受けてください。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2022.11 No.372

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ