くすりの話

2023年2月28日

くすりの話 
整腸剤

執筆/石井 憲輔(東京・あきしま相互病院・薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた薬の質問に薬剤師がお答えします。
 今回は整腸剤についてです。

 整腸剤は、腸内環境を整えて下痢や便秘などの消化器症状を改善する薬です。
 人間の体の中には100兆個とも言われる腸内細菌が生息しています。腸内細菌は「善玉菌」「日和見菌」「悪玉菌」の3つに分類され、これらが「2:7:1」のバランスになるのが最も理想的とされています。
 乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、腸内で乳酸や酢酸を作り、腸内を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑えます。また善玉菌は腸内でビタミンを作ったり、体の免疫機能を高める働きがあることも知られています。
 人類は古くから、これらの善玉菌を食事で摂取してきました。ぬか漬けやキムチなどの漬け物、チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品、納豆や味噌などの大豆発酵食品など、枚挙にいとまがありません。
 実際には、口から入った善玉菌の多くは胃酸で死滅してしまいます。でも、善玉菌の死骸は腸内の善玉菌のエサになりますし、悪玉菌の増殖を抑える働きもあります。
 最近はヨーグルトなどを中心に「生きて腸まで届く」ことを売りにした商品が発売されています。腸に到達した善玉菌は2週間程度で体外に排泄されます。食生活の中で、継続して善玉菌を摂取するのが理想です。

抗生物質との併用も

 整腸剤は善玉菌の効果を薬として活用するものです。病院や診療所で処方される場合もありますし、ドラッグストアやコンビニなどで買うこともできます。乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌や酪酸菌が配合され、腸内環境を整える役割が期待されます。
 医療機関を受診した際に、抗生物質と併せて整腸剤を処方されることがあります。細菌を抑える抗生物質が腸内細菌のバランスを崩すことがあり、その予防のために処方されます。
 整腸剤を飲んでも下痢や便秘などの症状が改善しない場合、腸内環境以外の原因があるかもしれません。病気が隠れていることもありますので、早めに医療機関を受診してください。
 大切なことは、整腸剤の効果に過度に期待せず、健康を補助するものとして活用することです。偏食やストレス、睡眠不足や運動不足など、腸内環境を悪くする要因を避けることも重要です。分からないことがありましたら、薬剤師にお問い合わせください。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2023.3 No.376

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