くすりの話

2024年3月29日

くすりの話 市販薬のオーバードーズ

執筆/谷本 昌義(外苑企画商事、薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた質問に薬剤師がお答えします。
 今回は市販薬のオーバードーズ(過剰摂取)についてです。

 市販薬のオーバードーズ(過剰摂取)とは、薬局やドラッグストアで購入できる薬を大量・頻回に服用することです。濫用されているのは一般的なせき止めやかぜ薬などで、これらには麻薬や覚醒剤と同様の成分がごく少量含まれています。そのため一度に多く服用すると、一時的に気分が落ち着いたり高揚したりします。服用を繰り返すうちにそれまでの量では効かなくなり、さらに多量を摂取するようになります。
 オーバードーズを続けると、副作用により身体に悪影響を及ぼしたり、やめたくてもやめられなくなる恐れがあります。このような状態で急に薬の服用を中止・減量すると「吐き気・嘔吐・手の震え・幻覚・イライラする」などの離脱症状が現れ、これらの症状を和らげるために、また薬を服用してしまうという悪循環に陥ります。また正しい用法・用量で服用しないと、肝障害や意識障害を起こしたり、最悪の場合、死に至ることもあります。

オーバードーズの背景

 10~20代の若い世代を中心にオーバードーズが増加しています。従来の違法薬物と比較して、女性が多く、非行歴が少ないなどの特徴があるとされています。
 背景には家庭や学校、職場などで感じている「つらい気持ち」があり、それを和らげるために市販薬に頼ってしまうと考えられます。いじめや虐待、学校や職場での孤立など深刻な問題が潜んでいる場合もあります。
 周囲の人が本人に対してオーバードーズをしたこと自体を叱ったり、責めたりすることは根本的な解決にはなりません。「ダメ。ゼッタイ。」だけでは“ダメ”なのです。原因となっている悩みや問題に、一緒に向き合うことが解決の第一歩。また、自分たちだけで解決しようとするとこじれてしまうこともあります。医療機関や精神保健福祉センター、保健所などに相談し、専門家のアドバイスを得ることも大切です。

規制強化の対策も

 昨年4月から適用された厚生労働省通知により、「濫用等のおそれのある医薬品」の指定範囲が拡大されました。従来は鎮咳去痰薬※に限っていたコデイン、ジヒドロコデイン、メチルエフェドリンについて、含有する製剤はすべて指定範囲になりました。これによって、対象となる一般用医薬品は2倍以上に増えました。
 販売者は、濫用等のおそれのある医薬品を若年者が購入する場合、氏名・年齢や他店での購入状況などを確認しなければなりません。

鎮咳去痰薬 せきを鎮め、痰を喉から出しやすくする医薬品

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2024.4 No.389

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ