くすりの話

2024年2月29日

くすりの話 防災とお薬

執筆/安田 豊(北海道・北健友社、薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた質問に薬剤師がお答えします。
 今回の質問は防災とお薬についてです。

 元日に起きた能登半島地震に心を痛めている方も多くいらっしゃると思います。昨年は関東大震災から100年の節目でした。南海トラフ地震や首都直下地震など大規模災害のリスクに直面する私たちにとって、防災意識は常に重要です。今回は薬剤師の視点から防災とお薬について考えます。
 大規模な災害が起きると、72時間は救急・救命が優先されるため、通常診療はそれ以降になる可能性があります。災害後の混乱も考慮に入れて、いつも服用しているお薬は3~7日分ほど余裕をもって準備しておく必要があります。 また、けがや打撲など応急手当が必要になることも想定して、可能であれば消毒薬や冷湿布などを常備してください。

「お薬手帳」の重要性

 日頃はお薬の情報が病院や薬局に保管されているため、「お薬手帳」が有効に活用されていると感じることは少ないかもしれません。しかし、災害時には停電で電子カルテが使えなくなるなど、いつものお薬が分からなくなることがあります。自分が服用しているお薬の名前や種類を含有量まで正確に覚えておられる方は少ないでしょう。
 お薬手帳があれば、お薬の情報はもちろんのこと、過去の処方の変化からたくさんの情報を読み取ることが可能です。アレルギー症状や副作用を未然に防ぐこともできます。
 避難生活が長期化すれば、さまざまな事情により次々と避難所を移っていく方も少なくありません。お薬手帳に血圧や身体の状態などを書き込むことで、医療に関する総合的な情報を医療スタッフが共有する手段にもなります。

「災害処方箋」とは

 大規模災害時には、必要な医薬品を提供するために「災害処方箋」が適用される場合があります。災害処方箋とは、災害救助法に基づいて、救護所や避難所など医療機関以外で発行される処方箋のことです。
 災害への備えを意識しても、なかなか続かない方も多いかもしれません。「いつも」と「もしも」の間にある垣根を取り払い、日頃から取り組まないと一過性のものとして終わってしまいます。地域や行政が発信する防災に関する情報やその環境づくりを注視しながら、教訓を未来へつないでいきましょう。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2024.3 No.388

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