くすりの話

2016年9月30日

くすりの話 194 サプリメント編 摂り過ぎると危ない魚油成分

 イラスト 魚の油に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、血液サラサラやアレルギー軽減の効果を期待してサプリメントなどに使われています。「中性脂肪が気になる方の食品」としてトクホ指定を受けた商品もあります。また、EPAは医薬品として動脈硬化の治療に用いられています。

副作用に注意

 EPAは脳梗塞や心筋梗塞など、血栓(血の塊)で血管が詰まって起きる重大な障害を避ける目的で使いますが、副作用もあります。
 血液が固まりにくくなるため、出血するとすぐには止まりません。医薬品として服用する量では安全ですが、1日3グラム以上の摂取では注意が必要です。手術や出血を伴う歯科治療を受けるときは、医師などに相談して数日前から服用を中止しましょう。
 また、医薬品では肝機能障害、健康食品で滲出性紅斑といった副作用も報告されています。薬とサプリメントを飲み、その上に血液をサラサラにする食品をたくさん食べると、副作用の危険性が高まります。ご注意ください。

油の摂り過ぎが問題

 テレビなどで健康に良いとされる「不飽和脂肪酸」ですが、バランスが大切です。特に、植物油などに含まれるリノール酸などの「n-6系不飽和脂肪酸」と、DHAやEPAなどの「n-3系不飽和脂肪酸」は、代謝された結果、微量でも身体に大きな影響を引き起こす物質を生成するため注意が必要です。すでに摂り過ぎの傾向があるn-6系は、アトピーなどアレルギー疾患を引き起こすことが問題となっています。
 生活習慣病予防には油脂の総摂取量を控えると同時に、n-6系をn-3系の4倍以内にすることが推奨されています。米国食品医薬品局(FDA)は、サプリメントからの摂取はDHAとEPAを合わせて1日2グラムを超えないように警告しています。
 必要なことは、n-3系を余分に摂ることではなく、マーガリンのようなn-6系を減らすことです。

健康効果は限定的

 魚の油に治療効果があるといっても、全ての効果が解明されてはいません。EPA製剤の大規模臨床試験では、心疾患の発症率を下げる傾向が出ましたが、他の治療法と比べて有意の差は認められていません。
 心疾患の有効な予防策は、食事の改善や運動、ストレスの回避という、当たり前の健康法です。またサプリメントに頼らずとも、お茶や魚、酢、納豆、タマネギなどが、血液をサラサラにする食品として売られています。EPAは、サバやイワシなどの青魚に多く含まれます。DHAは、青魚の他にマグロなど油の多い魚に多く含まれています。高価なサプリメントではなく、魚を食べる回数を増やすことをおすすめします。

回答/藤竿伊知郎(外苑企画商事・薬剤師)
監修/高田満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

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いつでも元気 2016.10 No.300

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