くすりの話

2017年8月31日

くすりの話 健康食品の食物繊維

回答/藤竿伊知郎(東京・外苑企画商事)
監修/高田満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 食物繊維は、健康食品の隠れたヒット商品です。特に「難消化性デキストリン」は、特定保健用食品(トクホ)の3分の1(6月21日現在で380製品)、機能性表示食品の7分の1(7月18日現在で143製品)で利用されています。

●変わってきた食物繊維の効用

 食物繊維とは、ヒトの消化酵素では消化されない成分の総称です。私たちは主に野菜・果物・海藻など、植物性の食品から摂取しています。
 1970年代から研究が進み、ゴボウやリンゴなどに含まれる水に溶けない繊維が、便の量を増やして便通を良くすることが知られています。
 最近注目されているのは、「難消化性デキストリン」のように水に溶ける成分です。腸内細菌の餌となり整腸作用があるだけでなく、糖の吸収を緩やかにして食後の急激な血糖上昇を抑える、脂質の吸収を遅らせて高脂血症の改善につながる、などの効果が期待されています。
 また、飽食の時代に合わせて“ダイエットに有用な成分”として利用が進んでいます。青汁のように昔からある製品でも、食物繊維を加えるだけで機能性表示食品と表示できるようになり、売り上げを伸ばしています。

●有効性は不十分

 「トクホ飲料」は脂肪の排出量が1.9倍になると宣伝していますが、その根拠となる論文は原材料メーカーのもので、客観性を欠いています。にもかかわらず、この結果を複数の製品が引用しています。
 論文では、1日に55gの脂肪を含む食事を10日間食べるという試験を、男女5人ずつ、食事ごとに5gの難消化性デキストリンを飲んだ群と飲まなかった群に分けて比較しています。その結果、吸収された脂肪の比率は飲んだ群では97.4%、飲まなかった群では98.6%でその差はわずか1.2%でした。統計上の差はありますが「脂肪の吸収を抑える」とうたうには不十分です。

●食物繊維の摂り方

 日本人の食事摂取基準(2015年)によると、食物繊維の1日の摂取目標は成人女性18g、成人男性20gですが、摂取実績は13g。食生活が高タンパク・高脂肪になっている現在、「食物繊維をもっと摂るように」と国も提唱していますが、不十分なのが現状です。
 1990年代に「食物繊維は大腸がんを防ぐのか」という複数の研究が実施されました。その結論は、「食物繊維の摂取が1日10g未満の食事だと大腸がんになる危険性は高まるが、食物繊維をたくさん摂っても、摂取量に比例してがん発症の危険性が下がることはない」というものでした。
 また、サプリメントで食物繊維を補充しても、大腸がんのリスクは下がらないことも分かっています。
 食物繊維の成分には、最近になって注目されたものもあり、長期に摂取した場合の身体への影響や安全性についての情報は不足しています。
 食物繊維の摂取は、高価なサプリメントではなく、根菜などの野菜を食べる機会を増やすことで改善しましょう。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2017.9 No.311

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