MIN-IRENトピックス

2017年7月4日

くすりの話 セルフメディケーション税制

回答/谷本昌義(東京・外苑企画商事)
監修/高田満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 今年1月から「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」が始まりました。これはどういう制度で、なぜつくられたのでしょうか。

●どういう制度?

 市販薬を買った場合、これまでも医療費控除(※1)の対象となっていました。医療機関で支払った医療費の自己負担額と治療のために購入した市販薬(※2)の金額が合計で年10万円を超えた場合は、控除の対象です。
 ただし、疲労回復や健康増進のための薬(疲れ目のための目薬、酔い止め薬、健康増進目的のサプリメントや健康食品など)は対象外です。
 セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例で、対象となる市販薬の購入額が年1万2000円を超えた場合、上限10万円までの費用について控除の対象となります。対象となる薬は、医療用から転用された「スイッチOTC医薬品(2017年1月時点で83品目)」を使用している市販薬(2017年4月時点で1622製品)のみです。
 確定申告時には対象の市販薬を買った時の領収書やレシートが必要ですので、保管しておいてください。

●なぜ、創設されたの?

 セルフメディケーションは、WHOが「自分の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義しています。これを推進するのであれば、本来全ての市販薬を対象とすべきです。
 では、なぜスイッチOTC医薬品のみが対象となっているのでしょうか。ここに、政府が考えている「薬の保険外し」の仕組みが見え隠れします。
 政府は2015年6月の経済財政諮問会議「経済財政運営と改革の基本方針2015」において、「市販品類似薬に係る保険給付について、公的保険の役割、セルフメディケーション推進、患者や医療現場への影響等を考慮しつつ、見直しを検討する」としています。さらに同年12月に発表された経済・財政再生計画 改革工程表では、「スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率の在り方について、関係審議会等において検討し、2016年末までに結論」とし、2018年度に具体化させることになっています。
 つまり、この税制の目的は「市販薬がある薬は、医療給付から外すか自己負担を増やすことにします。ただ負担を増やしたのでは国民から反発が起きるので、市販薬を買えば控除を受けられるようにしますので我慢してください」ということです。ゆくゆくは、生活習慣病の薬などもスイッチOTC医薬品として「市販薬にしてしまおう」との考えが見えてきます。
 セルフメディケーション税制の申請には、健康診断の受診などを行っていることが必要です。申請する場合は薬局や税務署に確認してください。

※1その年の1月1日から12月31日までの間に、ご自身や生計を同じにする家族のために10万円以上、200万円までを上限に通院への交通費なども含め総医療費の一部が還付されること。家族の総医療費が年間18万円を超えるときは、通常の医療費控除の申告を検討しましょう。
※2胃腸薬、かぜ薬、鼻炎薬、痛み止めの薬、動悸・息切れの薬、腰痛や捻挫の湿布薬、整腸剤、花粉症やアレルギーのための目薬、殺菌や消毒薬、口唇ヘルペスの再発治療薬、イボや魚の目の皮膚の薬・内服薬、にきびの塗布薬、絆創膏など

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2017.7 No.309

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