くすりの話

2018年2月28日

くすりの話 
カルシウムのサプリメント

回答/藤竿伊知郎(外苑企画商事・薬剤師)
監修/高田満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 過食が問題となる現代、不足している栄養素としてカルシウムが注目されています。日本人の食事摂取基準(2015年)によると、50歳以上の1日のカルシウム摂取量は、女性650mg、男性700mgが推奨されています。一方、同年の栄養調査でカルシウム摂取量をみると、50歳代の女性の平均は499mgで、推奨されている量に比べて不足しています。
 カルシウムのサプリメントは、1日量の半分を補える製品が、1カ月分1000円以内で購入できます。あまり宣伝されていないにも関わらず、人気商品です。

●摂り過ぎは危ない

 「カルシウムは安全なサプリメント」と思っている方もいるでしょう。しかし2010年代に入り、心臓血管系の副作用が疑われるようになりました。代表的な研究を紹介します。
 2013年、アメリカで39万人を12年間追跡調査した研究で「1日1000mg以上のカルシウムをサプリメントで摂取していた男性は、心臓血管系の死亡率が2割高い」と報告されました。また、スウェーデンの女性6万人を19年間追跡した研究では「1日1400mg以上摂取した人は死亡リスクが5割高い」と報告されています。
 どちらの研究でも、食物だけでカルシウムを摂取した人の死亡率は高くありませんでした。

●体に与える影響は

 体内にあるカルシウムは99%が骨に存在しています。残りの1%は、細胞内や血液で神経の情報伝達や筋肉を動かす重要な役割を担っているため、その量は精密に制御されています。
 カルシウム摂取が健康に悪影響を与えない上限量は、専門家の間で見解が分かれています。
 私は、さまざまな研究結果から、「サプリメントで一度に多くのカルシウムを摂ると、排泄機能が追いつかず、動脈内が石灰化して問題を起こすのではないか」という研究仮説をもとに、サプリメントの過剰摂取は控えた方が良いと考えています。カルシウム摂取を単純に「骨を構成するセメントを補充しているようなもの」と考えるのは危険です。

●“丈夫な骨”にはタンパク質も必要

 骨密度を維持しようと、カルシウムが多い食事を意識している方も多いのではないでしょうか。
 ただカルシウムを摂るだけでは、丈夫な骨を作ることはできません。骨に負荷をかける運動(ウォーキングやストレッチ体操)をしないと、食べたものが骨の再生に使われないのです。
 また、骨の体積の半分はタンパク質であるコラーゲン繊維で構成されています。骨が硬いだけでなく、曲げる力に耐えられるよう、高齢者は意識してタンパク質の摂取量を増やす必要があります。
 カルシウムサプリメントの1日量で参考になるのは、厚労省が「栄養機能食品」の上限としている600mgです。そこで、カルシウムの摂取はサプリメントではなく、食事の補助として、チーズやヨーグルトのような乳製品をとるようにしてはいかがでしょうか。乳製品が苦手な方は丸ごと食べられる小魚、大豆製品をお勧めします。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2018.3 No.317

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