健康・病気・薬

2018年3月14日

【新連載】52.健康食品・サプリメントによる副作用

 医薬品と違い、成分の含有量や品質に規制や基準はなく、中には無承認無許可の医薬品成分が含まれた製品や、アレルギーや肝障害をおこす成分が含まれた製品もあり健康被害もしばしば報告されています。

 健康食品とサプリメントに明確な定義はありませんが、一般的には健康食品とは「健康の保持増進に資すると称される食品全般」のことをいい、サプリメントとは「特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品」とされています。
 健康食品やサプリメントは、あくまでも健康な人が嗜好品や栄養補助食品として利用すべきものであり、疾病の予防や治療の効果を期待して用いるものではありません。健康への効用をしめす表現が認められているのも、通称「トクホ」といわれる「特定保健食品」(表示には消費庁への届け出と許可が必要)と、「機能性表示食品」(表示は消費庁への届け出のみ)などの一部の食品に限られています。
 にもかかわらず、テレビや雑誌、インターネット等で、個人の使用体験談などが掲載され、あたかも疾病の予防や治療に効果があるかのような宣伝が大々的に行われ販売されているところに問題があります。
 医薬品と違い、成分の含有量や品質に規制や基準はなく、中には無承認無許可の医薬品成分が含まれた製品や、アレルギーや肝障害をおこす成分が含まれた製品もあり健康被害もしばしば報告されていることに注意が必要です。
健康食品やサプリメントに関する信頼できる情報源に、国立健康・栄養研究所のホームページ「健康食品の安全性・有効性情報」があります。
 素材成分の作用や安全性情報のデータベースの他、最新ニュースや健康被害情報、医療従事者や一般向けの基礎知識情報が掲載されており参考となります。
 本稿では、サプリメントに関する基礎知識と注意点について、2007年の民医連新聞に掲載された藤竿伊知郎氏(薬剤師・協同組合 医療と福祉 情報室
 
 の寄稿記事と、これまで民医連副作用モニターに掲載された記事を再掲します。
 さまざまな健康食品やサプリメントが幅広く普及浸透している今日、日常診療では問診などでその利用や摂取の有無を必ず聞きとることが大切です。医薬品との相互作用や疾病への影響、有害事象が起きていないかなどを患者とともに評価することも大切です。

■“サプリメント”危険性を忘れず情報の収集を 

 大流行のサプリメントですが、危険性や不明な点も多い。医療従事者は、どう向き合ったらいいのでしょうか? 『サプリメントとの賢いつきあい方』あけび書房(2006年)の著者の藤竿伊知郎さん(東京・協同組合 医療と福祉)の寄稿です。(一部改変)

○広がる誤った健康知識

 サプリメントを利用する消費者は増え続け、市場調査によると3人に2人が何らかを使用しています。医療現場では以前、慢性疾患や難病の患者が利用する健康食品が問題になっていました。サプリメントは若者や働き盛りへも利用が広がっています。
 1995年から始まった規制緩和で、医薬品と区別がしづらいサプリメントが販売され、消費者の誤解を生んでいます。テレビやインターネットなどで情報が洪水のように提供され、医療従事者さえサプリメントの「有用性」情報に振り回されています。
 健康不安をあおるマスコミのコマーシャルが繰り返し流され、医薬品で問題になっている「薬が病気をつくる」状態が、サプリメント分野でもおきています。
 サプリメントがもつ最大の問題点は、誤った健康知識をもとにムダな商品を買わせることです。サプリメントを飲んでいれば病気を予防できると思い込むことで、適切な受診の機会を奪うおそれがあります。
 一方で、安全性が保障されず、服用すること自体で健康障害を起こす例もたくさんあります。食欲抑制剤や甲状腺ホルモンといった危険な薬剤が混入したダイエット食品なども輸入されています。その他にも、肝障害を引き起こしたサプリメントは後を絶ちません。アガリクス製品の安全性を検証するために国立医薬品 食品衛生研究所がおこなった試験では、発がん性が指摘される商品も見つかっています。

○他人にすすめないこと

 消費者は、「あやしい」と思いながらも、テレビや雑誌の健康記事を信じて、購入しています。テレビ局のバラエティー番組の制作実態が暴露されましたが、それは氷山の一角です。
 これに対し、エビデンスのない情報が多いため、健康指導をする立場の医療従事者は、患者へのアドバイスに困っています。
 限られた情報の中でも指導できることは以下のような原則です。

 (1)消費者ができる自衛策は、(①効果の評価を医療関係者といっしょに行う、②副作用が出たら薬剤師や消費生活センターに伝える、③他人には簡単にすすめない。)などです。

 (2)サプリメントは生活を豊かにすることができる道具とされています。ただし、作用に は限界があり、安全性は自分で管理する必要があり、購入費用も安くありません。利用にあたっては、食事の補助と考え、家計に影響がでない範囲で利用するのがよいでしょう。

○被害情報を蓄積しよう

 現時点で充実すべきことは、患者から有効性・安全性の情報を収集し蓄積することです。日本医師会は、会員向けに健康食品の健康被害をデータベース化し始めています。民医連の副作用モニターにも健康食品による被害が報告されています。

 痩身目的で「雪茶」を飲用。重篤な肝機能障害を起こした症例です。五〇代の女性で、一カ月半後に下痢症状が出現。その後、全身倦怠感、腹部膨満感や肝機 能検査値の異常が出て入院しました。しかし、主治医が原因を精査しても不明、患者の家族がインターネットで情報を見つけ、やっと原因が特定できました (「民医連新聞」2005年12月19日号に詳細)。

 現場でつかんだ健康被害情報は事業所の薬剤師を通じて、副作用モニターへお寄せください。また、サプリメントについて評価した情報は積極的に公開してください。

(民医連新聞 第1403号 2007年5月7日)

 なお、藤竿薬剤師が評価したサプリメント情報などは、同氏のホームページに公開されていますのでご参照ください。http://www.gaiki.net/lib/2005/05127spl0.html

■副作用モニター情報〈230〉コエンザイムQ10(CoQ10)による好酸球性肺炎の報告事例から

 CoQ10は生物のほとんどの細胞内に存在する補酵素です。医薬品としては70年代から心機能の改善を目的に日本だけで使われました。が、現在では医療目的ではほとんど使われなくなりました。
 ところが、最近のサプリメントブームで健康食品として復活しました。「活性酸素によるダメージを防ぎ、免疫力を高める」と、宣伝されています。今回、 CoQ10の副作用として報告された好酸球性肺炎の症例を紹介します。
(症例)60代女性。友人に、「健康に良い」と、CoQ10をすすめられた。服用を始めて2~3カ月ころより咳が出はじめたが、風邪か花粉症だろうと様子をみていた。良くならないので受診し、軽い肺炎といわれた。
 クラビット錠を8日間服用後、クラリス錠を15日間服用しても改善せず、CoQ10の副作用を疑い、服用を中止した。プレドニンによる治療を53日間行い、完治した。

*    *

 CoQ10のサプリメントの用量は、医薬品の常用量の3~9倍が宣伝されています。医薬品の常用量30mg/日では消化器症状や発疹など軽微な副作用が1.5%です。サプリメントは医薬品の用量を大きく上回って摂取されることに注意しなければなりません。また、複合剤が増えていることも問題です。
 健康食品やサプリメントが流行し、今後も摂取する人の増加が予想されます。医師が患者さんの利用している健康食品類に気がつけば、もっと早く対処できたと思います。投薬時に「薬以外にも飲んでいるものはありますか?」と声をかけることが、重要になっています。

(民医連新聞 第1363号 2005年9月5日)

■副作用モニター情報〈237〉健康食品「雪茶」による肝機能障害

 健康食品によって、グレード3の重篤な肝機能障害が起きた症例を報告します。
(症例)58歳女性。痩身目的のためにデパートで健康 食品「雪茶」を購入し、飲用。1カ月半後、下痢症状が出現。下痢は2週間で落ち着いたが、全身倦怠感、腹部膨満感、悪心・嘔吐が出現。体が黒っぽくなっていることにも気がつく。近医を受診したが良くならず、当院を受診したのは、症状出現から約1カ月経過した後。検査値はGOT:754、GPT:1690、 T―Bil:7.98と高く、入院となる。
 肝機能障害の原因を精査し、ウィルス性肝炎、閉塞性肝炎、自己免疫性肝炎、悪性腫瘍は否定された。患者家族が、厚生労働省のホームページに「雪茶による肝機能障害」が掲載されているのを見つけ、報告。これによる肝機能障害を疑い、特に治療はせず安静のみで療養となる。徐々に肝機能は軽快、3週間後には GOT:106、GPT:282、T―Bil:1.97となり退院。

*    *

 厚生労働省は2003年12月に「雪茶」による健康被害を公表しました。が、その後も販売されています。薬剤科では入院時に副作用歴、健康食品の摂取の有無など確認をとっていましたが、「雪茶」の情報を聞きだせませんでした。患者家族がインターネットで情報を見つけていなかったら、原因の特定はできないままでした。患者からよく聞き取ることの大切さと、健康食品に関する情報入手の難しさを感じました。

(民医連新聞 第1370号 2005年12月19日)

■副作用モニター情報〈367〉サプリメント(グルコサミン)による肝機能障害

 サプリメント「植物由来のグルコサミン」による肝機能障害が報告されました。

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 症例)70代前半女性、C型肝炎、便秘、高血圧症、逆流性食道炎にて、アムロジピン、オメラップ、マグミット、サプリメントとしてローヤルゼリー(10年以上)服用中。関節痛で、植物由来のグルコサミン「HAC」服用を開始しました。3週間後、整形外科を受診し、ロキソニンテープを処方され、疼痛管理をしていました。
 服用開始2カ月後の血液検査でGOT/GPT:70/102、AL-P:967、γGTP:330、肝機能障害の疑いありと指摘されました。3日後の検 査では、GOT/GPT:76/79、AL-P:1124、γGTP:408。エコー施行しましたが、肝腫大などの異常所見なし。ロキソニンテープによる 副作用の可能性も検討し、同剤を中止。その1週間後、「急激なガクンとした疲れ」を訴えたため、両サプリメントを中止しました。中止4カ月後 GOT/GPT:20/16、AL-P:309、γGTP:33に回復しました。
 基礎疾患にC型肝炎がありますが、服用前に検査値異常はありませんでした。経過をみるとグルコサミンによる肝障害の可能性が高いと考えられました。この症例の薬物性肝障害診断基準スコアリングは、胆汁うっ滞型でスコア6点でした。

*      *

 サプリメントは、医療用医薬品と違い、医師の処方もなく、比較的安易に購入でき、最近では、テレビCMの影響も小さくありません。グルコサミンは、グルコースにアミノ基がついた代表的なアミノ糖であり、カニやエビなどの甲殻から得られるキチンを分解して得られます。今回の症例で、服用したグルコサミン は、トウモロコシから抽出して製造された植物由来のものでした。短期間であれば安全性が高いと思われていますが、グルコサミン摂取による、血糖値、血圧、 血中コレステロールの上昇などが懸念されます。糖尿病、脂質異常症、高血圧のリスクのある患者が服用する場合は、注意が必要です。薬局窓口で、患者からサプリメント服用を聞き取ることも重要です。

※ 植物由来のグルコサミン「HAC」(8錠中):グルコサミン1200mg、サメ軟骨抽出物(コンドロイチン含有)47mg、ユニベスチン250mg含有

(民医連新聞 第1518号 2012年2月20日)

■副作用モニター情報〈434〉 健康食品による急性肝炎

 健康食品による急性肝炎の報告がありました。

症例)70代女性。健康維持のためDHA、ブルーベリーエキス服用開始。約1カ月後に嘔気、嘔吐、めまい、倦怠感出現。メイロン注、エリーテン注にてやや改善。5日後には、白っぽい便、茶褐色尿あり、腹痛はないが食欲不振が続くため入院(GOT:298、GPT:1736)。眼球黄染はあるが、CT・MRIにて胆管の閉塞は認められず、DHA、ブルーベリーエキスの服用を中止。ソルデム3A、ネオファゲン注、サブビタン開始。入院1カ月後、肝生検にてアレルギー性機序による急性肝障害の発生と考えられた(中止1カ月後GOT:50、GPT:32)。

 販売元に集約された過去5年間の肝機能障害の報告では、DHA19件、ブルーベリーエキス30件。いずれも軽度で併用薬があるため因果関係は不明です。

【原材料】 DHA(精製魚油)、ゼラチン、グリセリン、VE含有食物油、ブルーベリーエキス(ブルーベリーエキス末)、シソの実油、ゼラチン、グリセリン、カロテノイド、マリーゴールド、ミツロウ、VB1、VB2、VB12

*        *

 急性肝炎のほとんどはウイルス性ですが、一部は、アルコール・医薬品・健康食品で生じています。当副作用モニターでもグルコサミン、雪茶などの健康食品やナイシトール(製品名)などの漢方薬でも肝障害が報告されています。症状は風邪症状に似ていますが、ビリルビン値が上昇し、眼の黄染・褐色尿・倦怠感などが生じます。
 健康食品などは、健康被害についての開示が不十分であり、医薬品のように副作用集積の義務もありません。テレビCMや広告などで消費者を引きつけ、宣伝されている「利点」だけに目を奪われやすく、通信販売やインターネットでいつでも手軽に購入できることにも注意が必要です。
 肝障害など、時には重篤なものも発現する可能性があると啓発する必要があります。

(民医連新聞 第1593号 2015年4月6日)

画像提供 京都民医連 一般社団法人メディカプラン京都
http://sukoyaka-pharmacy.com/

■副作用モニター情報履歴一覧
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**【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や354の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行っております。

<【薬の副作用から見える医療課題】バックナンバ->

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  1.民医連の副作用モニターとは~患者に二度と同じ副作用を起こさないために~
  2.アルツハイマー治療薬の注意すべき副作用
  3.味覚異常・聴覚異常に注意すべき薬剤
  4.睡眠剤の注意すべき副作用
  5.抗けいれん薬の注意すべき副作用
  6.非ステロイド鎮痛消炎剤の注意すべき副作用
  7.疼痛管理に使用する薬剤の注意点
  8.抗パーキンソン薬の副作用
  9.抗精神薬などの注意すべき副作用
  10.抗うつ薬の注意すべき副作用
  11.コリン作動性薬剤(副交感神経興奮薬)の副作用
  12.点眼剤の副作用
  13.消化器系薬剤の様々な副作用
  14.ジゴキシン(強心剤)の注意すべき副作用
  15.抗不整脈薬の副作用
  16.降圧剤の副作用の注意点
  17.トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)の副作用について
  18.脂質異常症治療薬の副作用について
  19.喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療薬の副作用
  20.潰瘍性大腸炎治療薬の副作用
  21.抗甲状腺ホルモン剤チアマゾールによる顆粒球減少症の重症例
  22.過活動膀胱治療薬の副作用
  23.産婦人科用剤の副作用
  24.輸液の副作用
  25.鉄剤の注意すべき副作用
  26.ヘパリン起因性血小板減少症
  27.高尿酸血症治療薬の注意すべき副作用
  28.糖尿病用薬剤の副作用 その1
  29.糖尿病用薬剤の副作用 その2
  30.糖尿病用薬剤の副作用 その3
  31.抗リウマチ薬「DMARDs」の副作用
  32. ATP注の注意すべき副作用
  33. 抗がん剤の副作用
  34. アナフィラキシーと薬剤
  35.重篤な皮膚症状を引き起こす薬剤
  36.投注射部位の炎症等を引き起こす医薬品について
  37.間質性肺炎を引き起こす薬剤(漢方薬を除く)
  38.漢方薬の副作用
  39.抗生物質による副作用のまとめ
  40.抗結核治療剤の副作用
  41.抗インフルエンザ薬の副作用
  42.ニューキノロン系抗菌薬の副作用
  43.水痘ヘルペスウイルス・帯状疱疹ウイルス治療剤の副作用
  44.薬剤性肝障害の鑑別
  45.ST合剤の使用をめぐる問題点
  46.抗真菌剤の副作用
  47.メトロニダゾールの副作用
  48.イベルメクチン(疥癬を治療するお薬)の副作用
  49.鎮咳去痰剤による注意すべき副作用
  50.総合感冒剤による副作用
  51.市販薬(一般用医薬品)の副作用

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