くすりの話

2018年3月30日

くすりの話 
乳酸菌

回答/藤竿伊知郎(外苑企画商事・薬剤師)
監修/高田満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 ヨーグルトなど乳酸菌を利用した製品は、古くから健康食品として利用されてきました。最近は「強さ」「免疫力」など、医薬品のような宣伝を打ち出す製品が増えています。
 特定保健用食品(トクホ)の第1号として、1998年に承認されたのが乳酸菌飲料です。トクホ市場の開拓者として評判になり、現在までに60件が許可されています。
 飲料のほかに、カプセルや分包された粉などの手軽に飲めるサプリメントも普及しています。機能性表示食品としての届出は、ビフィズス菌77件、乳酸菌12件、ガセリ菌10件、ラクトトリペプチド10件の合計109件(2月23日現在)。機能性表示食品全体の8%を占めます。

●注目されたきっかけは

 乳酸菌は糖から乳酸をつくる菌の総称で、ビフィズス菌、フェカリス菌、ブルガリス菌、ラクトミンなど、たくさんの種類があります。
 乳酸菌が注目されるようになったのは、20世紀初頭のこと。ブルガリアヨーグルトと長寿の関係を、腸内に住む善玉菌で説明する学説の発表がきっかけです。

●食物繊維と一緒に食べる

 乳酸菌は下痢症状を軽減する目的で、医薬品としても使われています。乳酸菌の効果効能については、免疫機能を調節しアトピー性湿疹の改善を目指すなど、たくさんの研究が行われてきました。しかし、下痢症状の軽減以外では、十分な有効性を示す結果は出ていません。
 乳酸菌が効果を発揮するには、基本的に生きた状態のまま腸に届くことが必要です。さらに乳酸菌を腸内に定着させるには、野菜(特に根菜類)、豆類、海藻類、キノコ類など、食物繊維を多く含む食品と一緒に乳製品をとることを心掛けてください。酸っぱい漬け物から摂取する植物性乳酸菌も重要です。
 腸内に住む細菌の活動が活発になれば、下痢だけでなく便秘も軽減できます。

●広告がうたう効果には疑問が

 現在、乳酸菌産生物質が持つ血圧抑制、免疫力調節など、食品分野での健康効果に注目した研究が進んでいます。テレビなどのコマーシャルでは菌種ごとに特長を謳い、それぞれの製品が効果を競い合っています。
 しかし、インフルエンザ予防やヘリコバクター・ピロリの除菌、花粉症などに対する効果は、研究結果の評価を待つ段階です。医薬品のような安定した効果を期待するには早すぎると思います。
 乳酸菌の恩恵を期待し、食事にヨーグルトなど乳製品を取り入れることはおすすめです。しかし、菌数を強調するサプリメントの効果には疑問があります。
 免疫効果を期待させ、菌数が多いことなどを理由に1日あたり2000円を超えるような製品もあります。医薬品で下痢症状を軽減するラクトミンの薬価は、1日3gで18.6円です。サプリメントを買うときに、この価格と比べて価値を評価してはいかがでしょうか。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2018.4 No.318

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ