くすりの話

2018年7月31日

くすりの話 
スポーツドリンク

執筆/中村伸也(鹿児島医療生協国分生協病院・薬剤師)
監修/高田満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 暑い夏になると、怖いのが熱中症。熱中症予防のためには、「こまめに水分を補給する」という知識もだいぶ浸透してきました。
 水分補給には、ただの水よりも「塩分や栄養分を含むスポーツドリンクのほうが良い」という話をよく耳にします。しかし、スポーツドリンクも飲み過ぎると体に悪影響が…。

危険その1 糖分の過剰摂取

 スポーツドリンクに限らず、炭酸飲料やジュースなどのいわゆる「清涼飲料水」には、一般にペットボトル1本(500ml)あたり10~15個前後(30~60g)の角砂糖が含まれています。WHO(世界保健機関)の最新指針によると、食事以外で1日に摂取しても良い糖分は1日の総カロリーの5%程度。平均的な大人の場合、25g程度となっており、500mlのスポーツドリンクたった1本で1日の必要摂取量を超えてしまいます。
 また、スポーツドリンクの飲み過ぎによる糖分の過剰摂取で、吐き気、腹痛、意識がもうろうとするなど、さまざまな症状が引き起こされることがあります(ペットボトル症候群)。10代~20代など若い人に多く、過剰摂取した糖分を体が処理しきれなくなることによって起こるものです。

危険その2 虫歯の原因

 スポーツドリンクは隠れ虫歯(初期虫歯)を引き起こす原因になります。虫歯はプラーク(歯垢)の中の虫歯菌が糖分を摂取し、酸を作って歯を溶かすことによって起こります。口の中が酸性に傾くほど歯が溶かされやすくなり、虫歯になりやすくなります。
 普段は唾液が中和して口の中を中性に戻す役割を果たしていますが、スポーツドリンクに含まれるクエン酸やアミノ酸などの酸は口の中を強い酸性にしてしまいます。野球やサッカーなどのスポーツをしている子どもが、休憩のたびにスポーツドリンクをがぶがぶ飲んでいると、口の中は酸性の状態が長く続き虫歯の危険が増えてしまいます。
 また、就寝中は唾液の分泌が少なくなるため、お風呂上がりにスポーツドリンクを水代わりに飲んでそのまま寝てしまうのも好ましくありません。スポーツドリンクを飲んだ後はお茶や麦茶を飲む、あるいは水で口をゆすぐといった、ちょっとした行動でも虫歯予防につながります。
 スポーツドリンクはあくまで「清涼飲料水」。糖分とカロリーが多く、飲み過ぎると体に悪影響を及ぼすことを忘れてはいけません。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2018.8 No.322

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ