健康・病気・薬

2016年4月5日

【新連載】5.抗けいれん薬の副作用の特徴

一般名フェニトイン(商品名 アレビアチンなど)、バルプロ酸ナトリウム(デパケン、セレニカなど)、カルバマゼピン(テグレトールなど)、ゾニサミド(エクセグランなど)、ラモトリギン(ラミクタールなど)、ガバペンチン(ガバペンなど)、レベチラセタム(イーケプラなど)

 てんかん発作は大脳皮質の一部の神経細胞群に、通常ではみられない発作性の脱分極電位が出現(興奮)することでてんかん発作が始まります。これに同期してネットワークを形成する近傍の神経細胞も発火し、周囲に更に興奮が広がり、発作が起こります。この細胞の異常な脱分極は、先天的な神経細胞膜の機能異常や種々の後天的な障害により、細胞内外のナトリウム、カリウム、 カルシウムなどのイオンバランスが崩れることにより発現します。抗けいれん薬は、このような異常刺激の発生や伝達を抑える薬剤です。
 抗けいれん薬は脱分極の原因であるイオンの細胞内への流入を阻害します。この作用機序で起こりうる副作用として過鎮静が考えられます。これにより心筋では伝導障害から徐脈や房室ブロック、消化器では消化管運動の低下、嚥下障害、便秘、尿路では排尿障害など各部位での「麻痺」が起こる可能性があります。
 次に代表的な薬剤の副作用の特徴について民医連新聞副作用モニター記事を参考にしながら述べていきたいと思います。

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●一般名フェニトイン(商品名 アレビアチンなど)

 本剤は体内の代謝能力が一定の濃度以上では飽和してしまい急激に血中濃度が上昇する典型的な非線形(薬剤投与量と血中濃度が比例しない)の体内動態を示す薬剤。低栄養による血清アルブミン低下や腎不全によって血中濃度補正値はさらに上昇します。
 血中濃度上昇による過鎮静、傾眠、運動失調のほか、洞停止、高度徐脈多数報告されています。薬剤過敏症候群を含む皮膚症状、血液障害、肝障害もみられ、骨代謝障害、歯肉肥厚などの特異的な副作用も報告されています。

症例)フェニトインの洞停止
80才台の女性 痙攣が収まらないため、フェニトイン注を375mg/日を点滴、血中濃度は治療域であったが一時的な徐脈出現、翌日には洞停止出現。フェニトイン中止で回復

症例)フェニトインによる意識障害
気管支炎、肺炎疑いで当院に入院。
2日後 全身強直間代痙攣あり。眼球左方偏位あり。体温38.8℃、ジアゼパム注5mg静注にてすぐに痙攣消失。その後も間欠的に痙攣が見られる。(症状は4日後まで)
痙攣に対し、フェニトイン注を1回125mg静注、1日2回で開始。
フェニトイン開始5日後 36℃台まで解熱。痙攣も落ち着く。頭部CT再検、新しい梗塞等なし。酸素3Lに減量。意識レベルは回復してきているが、発語が少ない。左上肢の不随意運動あり。
フェニトイン開始13日目。フェニトイン血中濃度43.2μL/mL(トラフ値)。有効血中濃度より高いため、フェニトイン注1回125mg、1日1回静注に減量。酸素2Lに減量。
フェニトイン投与開始15日目。発語なし。覚醒不良。嚥下不良。
フェニトイン投与開始18日目。 フェニトイン血中濃度31.5μL/mL(トラフ値=最低値)。追視はあっても発語はなし。フェニトイン注を中止。
フェニトイン中止7日目以降意識レベル徐々に改善。

副作用モニター情報〈399〉 「フェニトインによる薬剤過敏症候群の特徴」
 抗てんかん薬であるフェニトインによる過敏反応は、発熱を伴う軽度な発疹から、落屑性皮膚炎、血管炎、播種性血管内凝固などを伴う劇症の致死的な反応までが知られています。
 最近1年間の副作用モニターに報告されたフェニトインによる副作用は5例。薬剤性過敏症候群が2例、肝障害2例、顆粒球(免疫機能をつかさどる血中成分)減少1例です。
 過敏反応でよくみられる兆候は、発熱、好酸球増加、リンパ節疾患、血液疾患、肝障害、腎不全など。これらが様々な組み合わせで生じます。今回報告されて いる重篤な過敏反応症例でも、発熱と好酸球増多がみとめられました。また「フェニトイン治療開始後3週間以内に紅斑性麻疹状発疹が生じる」とする報告があり、報告症例と一致しています。
 一般的には軽度な型(はしか様あるいは猩紅熱様)が多く、発疹が消失した後にフェニトインの処方が再開されるケースがありますが、発疹の再発や症状の改 善が見られない場合には早急に薬剤の変更が必要です。報告された副作用症例では、フェニトイン少量再開で経過観察するも解熱せず、他剤に変更して解熱し皮 膚症状も改善しています。他剤変更の場合には、構造上同一の化合物(バルビツール酸誘導体、スクシンイミドなど)には十分な注意喚起が求められます。
 致死的な恐れのある重篤な型は、水疱性、剥脱性、紫斑性皮膚炎、紅斑性狼瘡、スティーブンス-ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome)、中毒性表皮壊死症候群です。フェニトイン投与の患者には、発熱や発疹が発現した場合はすみやかに報告することの重要性について説明し、重篤化を防ぐことが大切です。

(民医連新聞 第1553号 2013年8月5日)

症例)フェニトインによる薬剤過敏症候群
全身に紅斑と唇と上肢に表皮剥離を認め、採血結果:フェニトイン血中濃度:36.6(通常10-20)と判明。フェニトイン中止。翌日、全身の紅斑と唇と上肢の表皮剥離が悪化。フェニトイン散 1g(フェニトインとして100mg)/日に減量して再開。GOT:19 GPT:12 γGTP:139 尿素窒素:16.8 クリアチニン:0.29 白血球:7620 好酸球:16.1% CRP12.75。発熱持続し、フェニトインを中止し症状徐々に改善

●一般名バルプロ酸ナトリウム(商品名 デパケン、セレニカなど)

 バルプロ酸ナトリウムも古くから抗けいれん薬として汎用されてきました。民医連新聞副作用モニターにも多数の報告が寄せられています。薬物動態は非線形を示しますが、血中の蛋白結合(結合率90%以上)が飽和すると体内の分布が広くなるといわれ、投与量を増量しても血中濃度は頭打ちとなります。低蛋白血症の患者では血中濃度が低くても過量となっている場合があり注意が必要です。

バルプロ酸ナトリウム(Na)の重篤な副作用
 この1年間に、民医連の施設でもバルプロ酸の重篤な副作用が発生しています。肝機能障害、高アンモニア血症を伴う意識障害、重篤な血小板減少症で、いずれも添付文書に0.1~5%未満の頻度と記載されています。

【症例1】60代の男性で、高血圧症と便秘で通院中。脳神経外科からデパケンR200mg4錠/日を処方された。1か月後の採血で肝機能異常(AST68・ALT173・ALP714・γ-GTP283)を示し、デパケンRの服用を中止。その4日後の採血でAST139・ALT326・ALP363・γ-GTP141と推移、30日後には正常値に回復した。

【症例2】20代の肝機能障害のない男性で、てんかんでデパケンシロップ5%液12ml/日で服用中。血中濃度が低いため18ml/日に増量した。血中アンモニア値がその前後で76μg/dlから195μg/dlに上昇したため、12ml/日に減量。その後、徐々に血清アンモニア値は減少し、3週間後には84μg/dlまで回復した。

【症例3】60代後半の女性で、てんかんと高血圧症、骨粗鬆症、頻尿、変形性膝関節症の治療中。バルプロ酸を1100mg/日(血中濃度83μg/ml)服用中。疲労感、歩行障害、手の振戦、傾眠傾向が出たため血液検査をしたところ、血中アンモニア値が136μg/dlと判明。バルプロ酸中止後2週間で血中アンモニア値は26μg/dlに低下した。

【症例4】80代前半の女性で、クモ膜下出血後にデパケンRを500mg/日で開始、発作が起こるため600mg/日に増量。5カ月後、血小板値が5.1万個にまで減少、同薬を400mg/日まで減量し、4日後に血小板は12.4万個まで回復した(基準値15~35万)。

【症例5】50代女性。デパケンR800mg/日を服用中、血小板減少を指摘されていた。同薬を400mg/日に減量後、血小板は8.9万個から11.3万個に回復したが、発作回数が増加したため800mg/日に戻したところ、8.5万個まで減少。再び400mg/日に減量したところ、13.8万個まで回復した。

 メイラー〈Meyler,Leo〉の著した『医薬品の副作用大事典』には、「特に治療の初期に~肝機能障害検査を行うべき」、「バルプロ酸の血中濃度が中毒域に達していなくとも、中毒性脳症(傾眠、昏迷)、あるいは発作頻度の増加がみられる際には、すべて血中アンモニア濃度を測定すべきであり、濃度が上昇しているならばバルプロ酸を中止すべき」と記述されています。

(民医連新聞2010/03/01掲載)

 特異的な副作用として高アンモニア血症があげられます。バルプロ酸はミトコンドリアでカルバモイルリン酸シンセターゼIを阻害し活性を低下させます。この酵素はアンモニア代謝に関わっているため、アンモニアが蓄積してしまうと考えられています。

副作用モニター情報〈219〉 バルプロ酸Naによる高アンモニア血症
 バルプロ酸Naが高アンモニア血症を引き起こすことは知られています。ある施設群の調査では、同剤の投与患者43例中27例に高アンモニア血症を確認しました。

[53歳男性]600mg/日で服薬し、服薬開始後4カ月ごろに血漿アンモニアが172μg/dl(基準値30~86μg/dl)。バルプロ酸Naの投与を続けつつ、ラクツロース30ml投与。1カ月後測定すると142μg/dlに下がった。

[34歳女性]バルプロ酸Na300mg~1000mgで用量調整。3カ月後、肝機能は正常値だが血漿アンモニアが140μg/dl(基準値30~86μg/dl)。ラクツロース投与でも低下せず、バルプロ酸Na中止で低下。
 
 メーカーは「バルプロ酸Naによる尿素産生過程の酵素阻害」と、さらに肝機能代謝に影響する抗てんかん剤との併用で増強、としています。
 報告医療機関では、バルプロ酸Na投与には、以下の2点で注意を呼びかけました。

第1に、肝機能とアンモニアの測定は、投与開始から6カ月間はほぼ毎月、その後も年に3~4回程度行い、異常値の早期発見が大切なこと。
第2に、血漿アンモニアが240μg/dlを超えれば意識障害等が出るとの指摘もある。血漿アンモニアが高く、対応が必要と判断した場合、対症療法や同剤の減量などを常に考慮すること。
 バルプロ酸Naは、長期投与が多い薬剤です。定期的な血液検査で、高アンモニア血症の早期発見にこころがけましょう。同症の初期症状は、疲労感・傾眠・食欲不振などの意識障害。投与時の注意すべきサインです。

(民医連新聞 第1352号 2005年3月21日)

 カルバペネム系抗菌薬と併用すると血中濃度が急激に低下し、けいれんが発現した事例も紹介されています。

副作用モニター情報〈356〉 バルプロ酸ナトリウムとカルバペネム系抗菌薬との相互作用

 バルプロ酸ナトリウム(以下、バルプロ酸)は、各種てんかん、精神神経系疾患の治療薬として有効性が認められていますが、重要な相互作用が報告されており、使用にあたっては十分な注意が必要です。
 バルプロ酸とカルバペネム系抗菌薬(パニペネム、メロペネム、イミペネム、ビアペネム、ドリペネム、テビペネム)との併用は禁忌です。
 バルプロ酸とカルバペネム系抗菌薬との相互作用の機序は明らかではありませんが、たん白結合率の競合やカルバペネム系抗菌薬により、肝臓でのバルプロ酸のグルクロン酸抱合代謝が亢進するなどの報告があります。
 バルプロ酸の有効血中濃度は、40~120μg/mLです。カルバペネム系抗菌薬の併用で血中濃度が大幅に低下し、けいれんが再発した症例が報告されています。
 バルプロ酸とカルバペネム系抗菌薬を併用したことでけいれん発作を誘発した症例を、抜粋し示します(表)。

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 併用前のバルプロ酸の血中濃度は症例1、2が不明、3は63μg/mLでした。いずれも薬剤師から医師へ問い合わせを行っていますが、感染症治療を優先させるために併用されました。
 カルバペネム系抗菌薬との併用時にバルプロ酸の血中濃度をコントロールすることは、非常に困難と考えられます。今回の報告でもバルプロ酸の増量で血中濃度が上がらない例がありました。優先する治療を考慮し、併用薬を変更することが必要と考えます。

(民医連新聞 第1505号 2011年8月1日)

●一般名カルバマゼピン(商品名 テグレトールなど)

 古くから抗けいれん薬、鎮痛剤、抗うつ剤として汎用されており、副作用モニターにも多彩な報告が多くよせられています。
 傾向として過鎮静、心抑制、排尿困難、感覚異常などその作用機序に基づくもの、過敏症状、肝機能障害、低ナトリウム血症(SIADH)に分類されます。
 直近の10年間の報告では、皮膚症状をはじめとした過敏症状の報告が多く、中毒性皮膚壊死症候群(TEN)、スティーブンスジョンソン症候群(SJS)、薬剤過敏症候群(DIHS)やそれに準ずる重篤な症例も多く報告されています。厚労省への報告でも常に上位の薬剤です。相互作用も多く長期使用中でも併用薬によっては血中濃度の上昇による有害事象が発現する場合があり注意が必要です。
症例1)(一部省略。商品名は一般名に変更しています)
耳下腺腫瘍切除後の神経痛に対して、星状神経節ブロックを受け、カルバマゼピン200mg/日、 アミトリプチン10mg/日の処方
服用開始11日目 発熱あり、発熱以外の症状なし。
13日目 39℃の発熱。
14日目カルバマゼピン・アミトリプチン服用中止。
15日目 一旦解熱。
20日目 再度発熱。腰部に掻痒感を伴った皮疹出現。
21日目 嘔気出現、嘔吐あり。
24日目 皮疹が全身に広がり、DIHS(薬剤過敏症候群)、多形滲出性紅斑、薬疹の疑いで入院。 内服薬は全て中止。メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム注 40mg/day、ファモチジン注 20mg/dayにて治療開始。ステロイド外用剤処方。
25日目 顔面を含む全身に癒合した紅斑。体幹部にはほとんど正常皮膚は見られない熱感強い。水疱なし。体温は36~37℃台前半。軟口蓋に発疹。咽頭発赤軽度。
26日目 解熱。紅斑褐色化。新生紅斑なし。
35日目 紅斑やや改善傾向。
その後内服のベタメサゾンに切り替え徐々に減量。66日目 ベタメサゾン内服終了。

 カルバマゼピンは、抗けいれん薬の中では低ナトリウム血症の報告も多く、抗利尿ホルモン不適合症候群(SIADH)によるものと考えられます。
症例2) カルバマゼピンによる低ナトリウム血症
テグレトール開始。 7日目 テグレトール300mg⇒600mg その後Na値が低下し始めた。数分間の間代性けいれんあり。このとき動脈血Na116 その後血清Na120台で推移。6か月後Na125 尿中浸透圧344mosm/L>血中浸透圧253mosm/LであるにもかかわらずADHは1.5pq/ml(0.3~3.5)と分泌抑制なし。 また血中コルチゾール7.9μg/dlで副腎機能正常。甲状腺機能も正常、腎機能も正常。この為SIADHと診断。カルバマゼピンを斬減中止。水分制限し、塩化ナトリウム 6g/日経口摂取しNa正常化。その後塩化ナトリウム減量、中止も血清Naは正常。

●一般名ゾニサミド(商品名 エクセグランなど)

 皮膚症状の有害事象の報告の多い薬剤です。中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群:SJS)、薬剤性過敏症症候群(DIHS)などの重傷度の高い副作用が報告されています。

症例1 )背部・右上肢などの皮膚剥離認めたため、救急受診。中毒性表皮壊死症疑いにて入院。(※もともとてんかんに対してゾニサミド200mg/日→100mg/日服用)全身(顔も含む)に小水疱・びらんを伴う紅斑あり、口唇びらんあり→メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム1000mg/日投与
翌日 皮疹の拡大ないため、プレドニゾロン30mg/日内服開始
中止6日後プレドニゾロン10mg/日へ減量
中止8日後 上背部~右上肢にDDB(deep dermal burn 熱傷深度分類の深達性II度。 水疱・発赤・腫れ・湿潤が見られ、症状として、強い痛み、灼熱感、知覚鈍麻などがある)混在 背中の強い痛み(+) デブリードマン、分層植皮術施行

症例2 )脳出血・血腫除去術後症候性てんかんのため入院。バルプロ酸のみではコントロール困難なためゾニサミド200mg/日 内服開始し翌日退院となる。
3日後 皮疹出現。
13日後 皮疹の増悪のため受診。顔面:浮腫性、びまん性紅斑 口唇部:びらん、出血 全身に多型紅斑あり。皮膚剥離面積10%以下のためゾニサミドによるSJS症候群を疑い、ゾニサミドは中止となる。メチルプレドニゾロン注1g 3日間投与。ステロイドなど外用軟膏剤が処方される。
中止2日後 皮疹の増悪はないが、体幹部、下肢の水疱は悪化。皮膚剥離面積30%強のためSJSから中毒性表皮壊死症へ移行 した可能性あり。転院を検討。また、ステロイドはプレドニゾロン(5) 8錠 分2へと切り替えとなる。
中止4日後 専門治療のため転院。

 抗けいれん薬は、皮膚症状を伴う過敏症の原因薬剤となる頻度が高く、前述したようにカルバマゼピンは長年医薬品医療機器総合機構(PMDA)への副作用報告の上位に上がっています。最近では「ラモトリギンによる 重篤な皮膚障害について」の安全性速報が発出しました。民医連副作用モニターにも多くの報告が寄せられています。抗けいれん薬の構造式は多様で皮膚症状の発現を予想するのは難しいですが、ゾニサミドのようにその構造式にスルファミド基をもつものは、サルファ剤での過敏症の既往が参考になる場合があります。

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●一般名ラモトリギン(商品名 ラミクタールなど)

副作用モニター情報〈376〉 ラモトリギン錠(ラミクタール錠Ⓡ)による皮膚障害について

 ラモトリギン錠(商品名:ラミクタール錠)は、2008年10月にてんかん治療剤として承認され、11年7月に双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制の効能・効果が追加になった薬剤です。
 添付文書では、販売開始時から「警告」をはじめ「重要な基本的注意」「重大な副作用」で、皮膚粘膜眼症候群及び中毒性表皮壊死融解症などの重篤な皮膚障 害に関する注意喚起がされています。とくに皮膚障害の発現率は、投与8週間以内が高く、バルプロ酸ナトリウムと併用した場合や、小児に定められた用法・用量を超えて投与した場合に高いことが報告されています。バルプロ酸ナトリウムとの併用では、ラモトリギン錠のグルクロン酸転移酵素による代謝が競合され、 半減期が約2倍に延長することが知られています。
 これまで全日本民医連副作用モニターに報告されたラモトリギン錠による副作用は6件で、発疹の副作用は4件でした(皮膚粘膜眼症候群グレード3の症例1 例を含む)。いずれも投与1カ月以内での発現で、3例はバルプロ酸ナトリウムとの併用でした。中には、過量投与により疑義照会したにも関わらず、用量が変 更されず、皮膚障害が発現した症例もありました。
 また、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に、08年12月~11年11月までに報告された副作用は、重篤な皮膚障害が397例で、用法・用量が確認された251例のうち6割を占める152例で、承認された用法・用量から逸脱した使用での重篤な皮膚障害が発現していました。このため、厚生労働省は、今年 1月に「医薬品・医療機器等安全性情報・第287号」を出し、医療従事者への注意喚起の徹底を求めました。メーカーも昨年12月から、注意喚起の文書を直 接配布しています。
 ラモトリギン錠を投与する場合は、併用薬剤に注意しながら、用法・用量を順守し、増量時でも用量超過にならないよう、とくに皮膚障害に注意しながら投与 することが必要です。あわせて、患者への皮膚障害に関する服薬指導の徹底もお願いしたい。

(民医連新聞 第1528号 2012年7月16日)

●一般名ガバペンチン(商品名 ガバペンなど)

副作用モニター情報〈331〉 ガバペン錠Ⓡ(抗てんかん薬・ガバペンチン)の副作用のまとめ

 ガバペン錠Ⓡは、既存の抗てんかん薬とは異なる新しい作用機序をもつ、として2006年に発売されました。が、その作用機序は、未だ明確ではありません。この間、当モニターに13症例の報告が寄せられたので、紹介します。
 13症例に見られた副作用症状は22件でした。その内訳は、転倒・ふらつき・立位困難などが5件、眠気が4件、次いで重篤度2の全身性の過敏症状とみられる皮膚症状が3件、倦怠感2件、ほか、目のかすみ、嘔吐、振戦、会話障害、慢性腎不全増悪などが1件ずつ報告されています。いずれの副作用も開始1カ月 以内に発生しており、ふらつきや眠気は、用量が増えるとともに症状の増幅がみられています。
 本剤は、「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められない、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法」として適応になっています。海外では「神経因性疼痛」や「帯状疱疹後神経痛」を適応症としている国もあり、今回の報告症例の中には、適応外使用が散見されまし た。
 製薬メーカー報告では、本剤は国内での第II相、第III相臨床試験および長期投与試験において59.2%の副作用頻度を示しており、特に精神神経系副作用の発現頻度が高い薬剤です。今回報告された症例の中には、「力が入らず一人で立てない」「ふらついて起床時に転倒」「転倒しやすくなった」などの訴えがありました。 ふらつきから転倒し、骨折する危険もあります。本剤は加齢による排出能力の低下が認められるので、年齢や腎機能に応じて、投与量や投与間隔を調節する など慎重な投与を行い、ADL(基本的日常生活動作)を損なわないための配慮が必要です。

(民医連新聞 第1476号 2010年5月24日)

 ガバペンチンは抗けいれん薬にはめずらしくほぼ100%尿中に未変化体で排泄されます。腎機能低下症例では用量調節を行う必要があります。

●一般名レベチラセタム(商品名 イーケプラなど)

 副作用、相互作用が少なく血中濃度測定も不要として使用量が大幅に増加している抗けいれん薬です。
 使用経験が浅いため報告数は少ないが血液障害や皮膚障害などが報告されています。

症例)意識消失あり、バルプロ酸徐放性剤と併用でレベチラセタム開始。 検査値(白血球8100 赤血球340万 Hb10.2 PLT9万3000)除々に減少みられ、 内服開始14日目検査値(白血球3100 赤血球270万 Hb8.0 PLT4万6000)イーケプラ中止。本人自覚症状はなし。 中止19日目検査値(白血球3500 赤血球364万 Hb10.8 PLT7万7000)まで改善

 民医連副作用モニターには抗けいれん薬の副作用が数多く報告されています。過鎮静など作用機序に基づくものは「過量投与」による場合も多く減量で改善される場合もあります。薬剤の動態を把握し、患者の状態や血中濃度をフォローすれば、未然にあるいは軽症で食い止めることが可能な場合も多いと考えられます。個々の薬剤に特徴的な副作用もあり、定期的な検査を行い患者にも症状や危険性をよく説明し、すぐに受診して重篤化しないようにすることが大切です。

<画像提供>宮城民医連 みやぎ保健企画
http://www.tsubasa-ph.co.jp/company/greeting.html

**新連載ご案内【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や350の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ 40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行ってきました。
 今般、【薬の副 作用から見える医療課題】として疾患ごと主な副作用・副反応の症状ごとに過去のトピックスを整理・精査し直してまとめ連載していきます。

◎その他の副作用関連記事は下記からご覧いただけます。
https://www.min-iren.gr.jp/?cat=28

<【薬の副作用から見える医療課題】当面連載予告>
  2.アルツハイマー治療薬の注意すべき副作用
  3.味覚異常・聴覚異常に注意すべき薬剤
  4.睡眠剤の注意すべき副作用
  5.抗けいれん薬の注意すべき副作用
  6.非ステロイド鎮痛消炎剤の注意すべき副作用
  7.疼痛管理に使用する薬剤の注意点
  8.抗パーキンソン薬の副作用
  9.抗精神薬などの注意すべき副作用
  10.抗うつ薬の注意すべき副作用

以下、57まで連載予定です。

★医薬品副作用被害救済制度活用の手引きもご一読下さい↓
https://www.min-iren.gr.jp/ikei-gakusei/yakugaku/zy1/data/110225_01.pdf

 

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