副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2008年1月21日

副作用モニター情報〈281〉 点滴用脂肪製剤の副作用

 近年、栄養サポートチーム(NST)が稼動している施設が増えています。NSTでは、脂肪製剤の投与を推奨されており、ここ数年で使用量が急激に 伸びています。副作用モニターに2007年に入ってから2例の肝機能障害が報告されました。数は少ないですが、副作用を起こさない投与方法を考える上で、 示唆的な症例です。また、注意しないと副作用として認識されにくいことも示しています。

 〔症例1〕70代後半の女性。絶食のためフルカ リック2号を投与中。カロリーアップを目的に20%イントラファット100mlの投与を開始。36日目に肝機能障害が分かり、一旦、イントラファットを中 止。その6日後に再開、62日目に再び中止。2回目の中止後28日目にほぼ正常値まで肝機能は回復した。

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〔症例2〕70代後半の女性。食事摂取不能のため、ピーエヌツイン3号と20%イントラファット100mlの投与を開始。32日目に薬剤性肝障害と診断、一旦、脂肪製剤を中止。61日目にイントラファットを再開、10時間かけて投与するようにしたところ、肝機能は正常となった。

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 点滴用脂肪製剤は高濃度で少量の製剤です。点滴速度の調節が難しく、ついつい、 早くなりがちです。理想の投与速度は、0.1g(脂肪として)/(体重)kg/hr以下とされています。体重50kgの人に20%100mlの製剤を使用 する場合、4時間以上かけなければならない計算です。この速度を守ることで、脂肪がエネルギーとして有効に利用されるだけでなく、副作用の防止にも役立ち ます。
 食事として摂取した脂肪は、門脈系に入らずにリンパ系へ移行します。そして胸腺から極めてゆっくり血中へ入ります。これをイメージして脂肪製剤の点滴を投与設計してみましょう。

(民医連新聞 第1420号 2008年1月21日)

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