副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2008年10月20日

副作用モニター情報〈297〉 スルピリドによる中枢神経症状

スルピリドは、商品名「ドグマチール錠(R)」として1979年に発売されて以来、約30年間使用されている薬剤です。
 スルピリドはベンザミド系向精神薬で、選択的ドパミンD2受容体遮断作用を持ち、少量で抗うつ効果・抗潰瘍効果があり、大量で抗精神病効果を発現します。副作用としては、内分泌機能異常や、錐体外路症状などが現れることが知られています。
 2008年度上四半期までに、スルピリドによる副作用の報告が29件ありました。
 その中で中枢神経症状と思われる副作用は17件あり、錐体外路系の症状が多く報告されています。具体的には手の震えの報告が多く、ほかにも嚥下しにくさ の悪化・言語障害・流涎・両下肢のしびれや痛み・歩行困難・筋固縮・視力障害(目のかすみ)・失見当識とみられる発言・異常行動が報告されました。
 今回報告された症例では、少量の投与が多く、1日150mgが9例で、ほかの例はそれ以下の投与量で発現していました。副作用発現までの投与期間は数年から数日までと、大きな差がありました。また、高齢者がほとんどで、やや女性が多いようでした。
 厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルの「薬剤性パーキンソニズム」の項には、ベンザミド誘導体の発症期間について、短期間であるが、まれに1年 以上で起きる場合もあると書かれています。リスクファクターには、高齢者・女性・薬物量が多いことがあげられていますが、当モニターの症例からは、少量投 与でも副作用が起きていることがわかります。
 副作用が発現した場合の対応は、原因薬剤の中止・減量か他剤への変更が原則です。治療法として、抗コリン薬やアマンタジンを投与することがあります。L-ドパ製剤やドパミンアゴニストは有効でないことが多いので注意が必要です。
 たとえ、スルピリドの少量投与の場合でも、中枢性の副作用を早期発見するために、モニターし続ける必要があります。

(民医連新聞 第1438号 2008年10月20日)

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