副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2010年7月5日

副作用モニター情報〈334〉 イリボー錠(R)(塩酸ラモセトロン=男性の下痢型過敏性腸症候群治療剤)の副作用

 イリボー錠(R)(塩酸ラモセトロン)による便秘の報告があったので、紹介します。
 【症例】50 代女性。緊張するとたまに下痢をするという訴えで、セレキノンを開始したが効果がないため、2週間後にイリボー5μg/日が追加となった。本剤は女性への 適応がないので、疑義照会を行ったが、処方の変更はされなかった。服用3日目から便秘が発現し、3日間続いた。服薬を中止すると排便があった。次の受診時 に酸化マグネシウムと併用の指示が出されたが、イリボーを服用すると便秘で苦しくなるため自己中止した。その後便秘はない。併用薬はタケプロン、アロマシ ン、フォサマックなど。

*   *

 本剤は、抗がん剤投与時の制吐薬として使用されるセロトニン5-HT3受容体遮断薬ナゼア錠(R)と同成分で、用量を1/20にした製剤です。第III 相試験はプラセボとの比較だけで、既存の薬剤であるポリフル、トランコロン、セレキノンと直接の比較試験はされておらず、下痢型過敏性腸症候群で承認され ているのは現在、日本だけです。
 また、女性は男性に比べ、空腹時単回投与での血漿中未変化体濃度がCmaxで1.5倍、AUCで1.7倍と高く、副作用発現率が高くなります。また、プ ラセボに対する有意差が得られなかったため、女性への投与は現在認められていません。
 アメリカでは、女性の下痢型過敏性腸症候群治療薬として本剤と類似薬の塩酸アロセトロンが発売されましたが、虚血性大腸炎や重篤な便秘が現れ、死亡が数 例報告されたため、一時、自主回収されています。
 イリボー錠は臨床試験、市販直後調査でも抗コリン作用にもとづく硬便、便秘が多く報告されています。これらの症状が認められた場合は休薬し受診するよう 指導が必要です。
 また、今回の事例のような適応外使用の場合は、副作用被害救済制度の対象になりません。使用基準の徹底が求められます。

(民医連新聞 第1479号 2010年7月5日)

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