副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2011年2月7日

副作用モニター情報〈346〉 ベゲタミンB錠(フェノバルビタールを含む精神神経用剤)による薬剤性過敏症症候群(DIHS)

【症例】60代女性。認知症・身体表現性障害。ケンタン錠(消炎鎮痛剤・ロキソプロフェン)で皮疹の副作用歴あり。 不眠のためベゲタミンBを処方。服薬開始30日前後に両上下肢に発赤疹が出現。35日後に39.3℃の発熱、呼吸苦が起き、発疹は全身に広がる。結膜・口 腔粘膜は異常なし。薬疹の疑いで入院し、内服薬はすべて中止した。39日後に37℃台になりバイタルは安定。40日後DIHSと判断し、ステロイドパルス 療法を開始した。しかし翌日、呼吸苦が再現、DIHSによる多臓器不全・呼吸不全・循環不全となり(異型リンパ球17%、HHV-6陰性、DLST未実 施)、42日後も未回復。
 DIHSは高熱と臓器障害を伴う薬疹です。皮膚粘膜眼症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)が原因薬剤の開始後2週間以内に発症しやすいのに対 し、DIHSの多くは、2~6週間後に発症します。また、発症の2~3週間後にHHV-6(ヒトヘルペスウイルス)の再活性化を生じることが多く、通常の 薬疹と異なり、薬剤中止後も症状はむしろ進行し遷延化することが特徴です。軽快までに1カ月以上を要することがしばしば認められます。
 原因薬剤は、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾニサミド、アロプリノール、サラゾスルファピリジン、ジアフェニルスルホン、メキシレチン、ミノサイクリンにほぼ限定されています。
 過去5年間に当副作用モニターに7件の報告があり、このうち3件はカルバマゼピンによるものでした。これら薬剤の開始後は、初期症状である、紅斑、高熱 (38℃以上)、咽頭痛、全身倦怠感、食欲不振、リンパ節腫脹などに対し、多職種間での認識が必要です。また、本症例のように合剤中にフェノバルビタール を含む、ベゲタミン錠やアストモリジン錠(SJSで当モニター報告あり)などにも注意が必要です。
 医薬品副作用被害救済制度で昨年1月~10月までに支給が決定された558件のうち、DIHSが44件もあり、SJS、TENを合わせると107件にのぼっています。

(民医連新聞 第1493号 2011年2月7日)

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