副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2012年3月5日

副作用モニター情報〈368〉 昨年6月販売のメマンチン(メマリー錠(R))副作用速報

 アルツハイマー型認知症に使用されるNMDA (N-methyl-D-asparate)受容体拮抗剤、メマンチン(メマリー錠)の副作用の症例報告です。同剤は昨年1月に承認、6月に販売が開始されたばかりです。

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症例1) 食欲不振、無気力

 ドネペジル10mgを服用中の1年前に食物認知の障害があり、食べ物をまったく口に入れない時期が続いていたが、リスペリドンで改善していた70歳代前半の女性。
 メマリー服用開始2週間後、家族から、「なんとなくおとなしくなって一点を見つめている時間が増えた」という情報が。20mgに増量した4週後には「メ マリーを始めてからご飯を食べなくなって、片付けもできなくなった。着替えもしない」と。この時にメマリーは中止。併用薬はリスペリドンのみ。

症例2) 統合失調症の悪化

 統合失調症で長期治療中。約3年前から物忘れを自覚し、以来、クロルプロマジン、スルピリドを経てオランザピンを1.25mgで服用中の70歳代後半の 女性。1年前にドネペジル3mgを試したが、物忘れの悪化のため2週間で中止となっていた。メマリーを20mgに増量した4日後に「頭がザーザー鳴る」と 訴えて受診、メマリー中止。併用薬はブロチゾラムと六君子湯。(期日はいずれもメマリー開始時から起算)

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 承認時申請には、1115例のうち408例(36.6%)の副作用が報告されています。うち食欲不振は12例、添付文書への記載はありませんが、気力低 下が2例、幻聴は1例でした。メマリーの添付文書には、傾眠を除く抑制系の副作用や、統合失調症や幻聴についての言及はありません。類似構造を持つアマンタジンが「精神疾患のある患者では慎重投与」とされている一方で、メマリーは慎重投与にはなっていません。メマンチンは、弱いながらもアマンタジン同様の ドーパミン遊離促進作用を示すため、統合失調症の患者には不向きであることは薬理学的には予測可能です。
 日本の臨床試験では効果が確かめられたわけではないのに、大きな期待を受けて発売された薬です。安易に使用すると害にしかなりません。ご注意下さい。

(民医連新聞 第1519号 2012年3月5日)

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