民医連新聞

2013年11月4日

「特定行為に係る看護師の研修制度」 導入の問題点は――― 「反対署名」10万筆目標に 全日本民医連

 民医連は厚労省が検討している「特定行為に係る看護師の研修制度」への反対署名にとりくんでいます。三年に及んだ看護師の業務拡 大の議論は「特定看護師(仮称)」という資格創設には至らず「特定行為に係る看護師の研修制度」の創設として修正され推進されています。技術的難易度が高 く、判断も難しい医行為(特定行為)を医師の「包括的指示」や「具体的指示」があれば「看護師が実施できる」という内容に保健師助産師看護師法を改正しよ うとしており、看護の専門性を形骸化させ、医師不足を安易に補おうという流れです。現状と問題点を改めて検証します。

 議論の発端は、日本の医師不足です。「即効性のある対策」として看護師に医療行為を肩代わりさせる狙いがありました。

看護師すべてに特定行為をさせる

 厚労省の「チーム医療推進会議」「チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググルー プ」は、看護師が医師または歯科医師の包括的な指示の下、診療の補助を行う場合のあり方を議論しています。包括的指示に基づき特定行為を行う看護師には厚 生労働省が指定する研修を義務づけ。これとは別に、医師の具体的指示で特定行為を行う看護師には、医療安全の観点から特定行為の実施に係る研修を「努力義 務」としました。
 指定研修を終えた看護師が申請すれば、研修終了を看護師籍に登録するとともに、登録証を交付する、としています。
 現在のワーキンググループでは診療の補助のうち、「実践的な理解力、思考力および判断力を要し、かつ高度な専門知識および技能を持って行う行為」とされ た四一項目(褥瘡の壊死組織の除去、直接動脈穿刺針による採血、経口・経鼻挿管の実施など)について、指定研修での行為群の検討や、行為の流れの検討をし ています。
 全日本民医連の窪倉みさ江副会長(看護師)はこう指摘します。「看護師の勤務は毎日交代があります。ひとりの患者に対し、医師は『包括的指示』の看護師 と『具体的指示』の看護師の区別を毎日行うのでしょうか? 看護師間の階層化が強まる問題や医師増員の方針も曖昧になるのでは?」。

「チーム医療」を疎外

 問題は特定行為だけにとどまりません。在宅患者の死亡確認や、がんの転移浸潤に伴う苦痛症状のための薬剤の選択・投与などが「一般の医行為」となり、さらなる看護師業務の拡大が予測され、医療安全の面でも危惧があります。
 一〇月七日、全日本民医連看護改善大運動推進本部は、同制度について厚労省からレクチャーを受けました。厚労省は制度設立の目的を「チーム医療の推進で医師不足解消ではない」と強調しました。
 しかし窪倉副会長はこの見解について「『チーム医療』は患者さんを中心に、各医療専門職が、個々の専門性を活かし、共有した目標で協働して医療を実践す ること。この制度は看護の専門性を置き去りに、診療補助業務の中の『医行為』のみに絞って看護業務の拡大を図る内容です」と指摘します。日本医師会からも 看護師の特定行為を定めるのはチーム医療を疎外する、との見解が出ています。
 また業務の拡大で、看護師の離職が増えることも懸念されます。

看護師本来の業務を

 全日本民医連は今年三月に同制度への見解を発表。「医師不足の安易な対策にせず、患者・国民が望んでいる安全で安心な医療ができるように、情報公開を行い、国民的議論を行うべき」としました。
 窪倉副会長はあらためて、看護師本来の業務と専門性の大切さについて訴えています。「看護師が医師の業務を肩代わりするようなことになれば、誰が患者の 日々の状態を見ながら寄り添い、励ますのか。看護師業務の『療養上の世話』は、病気、高齢、障害等に関わらず、生きていく上で欠かせない営みのケアであ り、『生きる』をささえる看護の専門性でもあります」。
 現在、反対署名は八万筆超。来年一月の通常国会までに一〇万筆を目標に署名運動にとりくむとしています。(矢作史考記者)

(民医連新聞 第1559号 2013年11月4日)

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