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2014年10月20日

副作用モニター情報〈425〉 抗インフルエンザウイルス薬ペラミビル施行患者の死亡

 ペラミビル(製品名:ラピアクタ)は2009年に承認されました。1回の点滴ですみ、内服や吸入が困難でも使用できるため、高齢者や幼児への使用が多いと考えられます。300mgの点滴静注用バッグと150mgのバイアルがあります。
 今回、ペラミビル施行後に死亡した症例が2例報告されました。
症例1) 90代 女性、体重 34kg
 点滴5日前:3日前から鼻水がでる。血圧140/50、体温35.6度。香蘇散7.5g(分3)14日分処方。
 前日から熱、頭痛、鼻水、朝から足がだるくて動けないとの訴えで受診。インフルエンザ検査A(+)ペラミビル300mg点滴。クレアチニン:1.2mg/dl
 点滴翌日:未明に死亡したと連絡あり
症例2) 90代 女性、体重40kg
 発熱、体温38.1度。外来に救急搬送。血圧150/80、インフルエンザ迅速キットではA、Bともに(-)だったがインフルエンザとして対応することとし、ペラミビル300mgを点滴。血清クレアチニン(mg/dl)1.33
 点滴翌日に、電話で家族に様子を聞くと「食事もとり、いつもと変わりない。熱は測っていないが体熱感はない」との話だった。
 点滴から2日後の午後4時に急に低体温となり救急搬送したが心肺停止。死体検案となり「心不全」と診断された。
 点滴から4日後、実施病院に連絡あり。
 体内に入ったペラミビルは代謝を受けず腎臓から排泄されます。腎機能が低下している場合は排泄しにくくなるので、高い血中濃度が続きます。今回の場合、 クレアチニンクリアランスは20ml/分程度だったと考えられます。患者は低体重であり、AUC(血中濃度-時間曲線下面積:薬剤の血中濃度と持続時間の 指標)は通常の10倍程度になっていたと推察されます。添付文書では、クレアチニンクリアランスが30ml/分以下では、通常300mgの用量を 50mg(最高投与量600mg)に減量することになっています。
 承認時資料では、臨床試験で反復投与や高用量でも安全性には特に問題はなかったとされており、死亡の原因を過量のためと結論づけるのは難しいかもしれません。
 近年、使用が簡便なワンバッグ製剤(希釈済みのバッグ製剤で、そのまま点滴可能)が増えています。しかし、必ずしも1バッグ=1人分ではありません。ペ ラミビルのように腎機能による調節幅が大きい薬剤で、プライマリケアで汎用される可能性の高い薬剤の場合は、採用には特に注意が必要です。事業所によって は、バイアル製剤のみ採用し、処方の際はクレアチニンクリアランスによる用量調節基準が表示されるようにしています。

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