介護・福祉

2015年1月13日

【声明2015.01.12】介護報酬2.27%の引き下げ決定に断固抗議する

2015年1月12日
全日本民主医療機関連合会
会長  藤末 衛

 1月11日、政府は、2015年度介護報酬改定において2.27%の大幅な引き下げを決定した。 介護保険施設3団体をはじめ、多くの介護事業所が引き下げ中止を強く求めてきた中での強行であり、現状の困難をいっそう加速させる改定として到底容認できるものではない。

 第1に、2.27%は過去3番目の引き下げ幅であり、これまで最大だった2006年改定(2.4% 引き下げ)に匹敵する水準である。また、公称改定率はマイナス2.27%とされているが、介護職 員の処遇改善(+1.65%)、認知症・中重度ケア(+0.56%)など加算による対応をふくめた上 での2.27%の引き下げであることから、これらを除いた介護報酬全体は実質的に4.48%もの大 幅な引き下げとなる。すでに、特別養護老人ホームやデイサービスをはじめ、基本報酬の大幅な削 減が提案されている。今改定がこのまま実施されれば、多くの事業所がかつてない深刻な経営困 難に陥り、介護サービスの大幅な後退をまねくことは確実である。高齢化に伴って今後増大してい く介護需要に応えるどころか、事業所の閉鎖・廃業、参入事業者の減少により、地域の介護基盤そ のものの弱体化・崩壊につながりかねない事態となる。

 第2に、介護職員の給与の引き上げを見込んだと説明されているが、報酬全体が引き下げられ れば、処遇改善に係る加算だけが拡充されたとしても有効な処遇改善とはなり得ない。マイナス改 定で事業所の収益全体が減少すれば、事業を維持していくために正規職員を非正規職員に切り替 えたり、職員を減らすことも検討せざるを得ない事態が生じるからである。さらなる人手不足に陥る ことで、仮に職員の給与は上がったとしても、業務の過密化、労働環境全体の悪化により離職者を 増やし、結局はサービスの質の低下をまねくことになる。介護報酬全体の底上げこそ、処遇改善を はかる大前提である。政府自身、現状が深刻な人手不足にあると認識し、さらに2025年に向けて 100万人の介護職員の増員が必要との見通しを示しているにも関わらず、マイナス改定に踏み切 ったことは全く理解し難い。

 第3に、「介護サービス事業所の収支差率が高い」、「特別養護老人ホームは多額の内部留保 を 保有している」など、繰り返し強調されてきた引き下げの根拠は政府自身が否定している。収支差 率はあくまでも平均値であり、さらに事業所の回答数にもバラツキあることから、現状の経営実態を 正確に反映したものでないことは政府自身も認めてきた。また、特別養護老人ホームの約3割が内 部留保があるどころか赤字経営であることは老施協の調査でも明らかにされており、そもそも内部 留保といっても一般企業の内部留保とは性格が異なり、単純に比較対照できないことについては 財務省も「承知している」と述べるに至っている。報酬を引き下げる根拠がすでに否定されているに も関わらず、マイナス改定という結論を先行させた今回の決定は到底納得しうるものではない。

 以下、重ねて要請する。

  1. 介護報酬2.27%引き下げを即刻撤回し、「事業経営の安定性の確保」「介護サービスの充 実・質の向上」「介護従事者の抜本的な処遇改善」が可能となるよう、大幅に引き上げること

  2. 介護サービスの利用に支障が生じないよう、利用者の負担増とならない手立てを講じること

  3. そのために、消費税増税によらない必要財源を政府が責任をもって確保すること

以 上

(PDF版)

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