健康・病気・薬

2015年6月16日

副作用モニター情報〈439〉 ゾルピデムによる「一過性健忘」の副作用

 ゾルピデム酒石酸塩(先発品:マイスリー錠)という睡眠剤があります。特徴は、他の睡眠剤と比べて筋弛緩作用が少なく、半減期(血液中の薬物濃度が半分になる時間)が2時間と非常に短いことです。筋弛緩作用は、時として脱力感やフラつき・転倒につながることがあり、そうした作用の少ない同剤は、朝に眠気が取れないなどの持ち越し効果もないことから頻用されています。このゾルピデムに、一過性健忘の副作用が報告されました。
症例1)不眠症状が悪化したため、ゾルピデムを1錠から2錠に増量。夜中に夕食の残りを食べ、そのまま1時間ほど寝てしまった後、一度起きてきて「あんた、何しているのよ」と家族に話し、また寝てしまった。翌朝、その事に関して全く記憶がなかった。服用量を戻したところ副作用は治まった。
症例2)服用初日、夜中に2階から1階まで降り、外に出て傘を広げていた。本人にはその記憶がなかったため、服用を中止した。
 一般的に、睡眠剤には「前向性健忘(一過性健忘)」という副作用があります。服用した後の事を忘れてしまう健忘症状です。アルコールや他の睡眠剤・中枢神経抑制剤を併用すると、現れやすくなります。ゾルピデムでは、この症状は少ないとされていましたが、注意が必要です。副作用を防ぐ原則は、服用後はすぐに寝ること、睡眠中は起こさないこと。これは、睡眠剤一般にいえることです。
 添付文書には「十分に覚醒しないまま、車の運転、食事等を行い、その出来事を記憶していないとの報告がある」と記載されています。ゾルピデムは、他の睡眠剤と比べて副作用は少ないですが、効果が発揮されている時間に起きてしまったり、服用後に何かを行おうとすると、健忘症状が現れやすくなります。こうした事実をきちんと説明した上で処方しましょう。

(民医連新聞 第1598号 2015年6月15日)

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