健康・病気・薬

2015年7月21日

副作用モニター情報〈441〉 α1遮断剤による女性化乳房

 女性化乳房を引き起こす薬剤として、これまで当副作用モニターにはスピロノラクトン(利尿剤)、ニフェジピン、アムロジピン(血管拡張剤)、ロサルタンカリウム(降圧剤)、ランソプラゾール、ファモチジン(消化性潰瘍用剤)などが報告されています。症例数においてはスピロノラクトンによるものが圧倒的ですが、今回はアドレナリンα1受容体遮断剤について注目してみました。
 アドレナリンα1受容体遮断剤は、高血圧や前立腺肥大に伴う排尿障害に対して、主に高齢者に処方することが多い薬剤群です。これまでに副作用が報告されたのは、タムスロシン(先発品名ハルナール)7例、ナフトピジル(先発品名フリバス)2例、ドキサゾシン(先発品名カルデナリン)2例、プラゾシン(先発品名ミニプレス)1例です。乳房痛、乳頭痛、乳房のしこり、胸の張りなどの症例が報告されています。
 副作用発現時期は、服用開始後、数カ月から2年以上に渡っています。服用中止により徐々に改善していきますが、症状が消失するまでに半年程度かかった症例が3割もありました。
 薬剤により乳房が女性化してしまうメカニズムは分かっていません。薬剤の受容体選択性からみると、α1受容体はα1A(前立腺に多く分布)とα1D(膀胱に多く分布)、α1B(血管平滑筋に分布)に分類されます。報告例の多いタムスロシンは、受容体選択性がそれほど高くありません(α1A/α1D=3.3倍)。一方で、選択性が非常に高いシロドシン(ユリーフ)は(α1A/α1D=55倍)、多彩な副作用症例が報告されている中、胸部の訴えは圧迫感不快感が1例のみでした。
 全症例が軽微なものとして報告され、副作用としては重篤ではありませんが、患者さんにとっては不快な症状が長期に渡っている例もあり、また再投与での繰り返し例も3例ありましたので副作用歴にも注意が必要です。

(民医連新聞 第1600号 2015年7月20日)

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