健康・病気・薬

2015年8月4日

副作用モニター情報〈442〉 ピコスルファートナトリウムによる虚血性大腸炎

 ピコスルファートナトリウムは、便秘に対して処方される薬剤です。胃・小腸ではほとんど吸収されず、大腸に到達してから効果が現れます。腸内細菌そう由来の酵素であるアリルスルファターゼにより加水分解され、活性型のジフェノール体になり、大腸のぜん動運動を亢進させ水分吸収を抑制し、穏やかに排便を促す緩下作用をもたらします。
 緩下剤として便秘症に用いる他に、大腸検査前に腸管内容物を排除する目的でも用います。その場合、腸管内圧の上昇により虚血性大腸炎を発症することが知られています。しかし、下痢や腹痛などの症状を薬理作用による消化器症状ととらえてしまい、この重大な副作用を見逃す恐れがあります。また、処置薬として1回しか使用されないことから、原因薬剤として特定されないケースも考えられます。
 当副作用モニターに、ピコスルファートナトリウムによる虚血性大腸炎の症例が1例報告されました。
症例)3年前、下行結腸ガンにて腹腔鏡下部分切除術を行う。1年前の内視鏡検査では、S状結腸から直腸には炎症所見は確認されなかった。
 内服日、術後フォローアップとして注腸検査を実施。前処置として被疑薬10ml内服。直後より下痢症状が出現し、検査を中止。
 内服29日目、下痢・腹痛があり外来受診。対症療法を実施。
 内服40日目、症状改善せず入院。CT画像より、S状結腸から直腸にかけて結腸壁が浮腫状に肥厚。大腸炎と診断される。
 内服103日目、退院
 内服約3カ月後、大腸内視鏡にて改善傾向を確認。
 内服約7カ月後、腹部症状がないことを確認できた。

*      *

 腸管の狭窄あるいは便秘等により腸管内容物が貯留している場合、報告のような重大な副作用に特に注意しなければなりません。大腸検査の前処置では、水を十分に取るよう留意し、起こり得る副作用を想定し注意深く観察することが大切です。

(民医連新聞 第1601号 2015年8月3日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ