健康・病気・薬

2015年9月8日

副作用モニター情報〈444〉 ダビガトラン投与とAPTT測定

 ダビガトラン(商品名プラザキサカプセル)は、薬効の作用する仕組みがワルファリンと異なる抗凝固薬として2011年3月に発売されました。しかし、死亡例を受けて同年8月に安全性速報が出され、出血性副作用と腎機能低下について注意喚起されました。民医連としては、当モニター369回(2012年4月2日付)で、出血性副作用回避のためAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)測定の必要性を指摘しましたが、あらためて状況を報告します。
 過去1年間の出血性副作用報告は8例。症状は、皮下出血、鼻・口内出血、血尿、貧血、便潜血、APTT延長とクレアチニン上昇などで、重篤度はおおむねグレード2でした。発現時の投与量は全例220mg/日以下であり、ワルファリンへの変更や減薬で対応しました。
 8例中、APTTを測定していたのは4例で、うち2例は40~50秒を超えたあたりで出血性症状があり中止(APTT正常値:25~36秒)。
 1例は開始14日目でAPTT95.5秒でしたが注意しながら継続し、81日目で鼻出血があり中止。また1例は、80代後半男性、開始7カ月目でAPTT84.7秒、クレアチニン1.51mg/dlとなり、中止によって出血性症状を回避しています(PT-INR値不明)。
 ダビガトランの作用はビタミンK阻害ではないので、ビタミンK依存性凝固因子の活性を示すPT-INRよりも、APTTが薬剤の濃度と対応することが分かっています。メーカーは、薬物血中濃度測定に基づく用量調節を検討していましたが、実用されませんでした。
 報告例を見る限りAPTTと症状発現にばらつきが見られますが、添付文書には、臨床試験において薬剤の血中濃度が一番低い時のAPTTが80秒を超えると大出血が多かったと記載されています。腎機能とAPTT値をチェックすることが、過度な抗凝固作用を判断するのに大切です。また、私たちの事業所にくる前に通院していた医療機関でカプセルを開けて中身を取り出し与薬していた(脱カプセル)報告例がありました。本剤は、脱カプセルによって生物学的利用率が高くなり血中濃度が上昇します。注意が必要です。

(民医連新聞 第1603号 2015年9月7日)

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