くすりの話

2002年5月1日

くすりの話 55 インフルエンザのときの解熱剤使用に注意

Q:こどもがインフルエンザといわれました。先生は「インフルエンザのときは、あまり解熱剤を使わない方がよいのですが…」と言われましたが、どういうことでしょうか。

A:発熱は細菌やウイルスなどから体を守る大切な防御機能のひとつです。
 解熱剤、鎮痛剤を使用すると、不快な熱や痛みは一時的に和らぎますが、体をまもる免疫反応も抑えてしまうため、インフルエンザ自体を悪化させ脳炎などを悪化させる可能性があるのです。
 厚生省の研究では、インフルエンザの発症にともなって重篤な脳炎・脳症を示す報告は、98年から00年の冬2シーズンで約320例に上っています。その多くは5歳以下の乳幼児ですが、成人でも発症していました。
 この調査では「インフルエンザ脳炎・脳症の患者の中で、ボルタレン(解熱鎮痛剤)を使用しない患者に比較して、使用した患者は死亡の危険が14倍高かったと」いう結果となりました。
 厚生省は00年11月以降、インフルエンザ脳炎・脳症患者にボルタレン(ジクロフェナック)は絶対投与をしてはいけない、また昨年よりポンタール(メ フェナム酸)も小児のインフルエンザには原則投与しないようにと呼びかけています。

Q:実際に解熱剤を使う場合にはどんなことに注意すればいいですか?

A:解熱剤は体温を下げる作用があるだけで、病気そのものを治すものではありません。
 しかし、特に小児や高齢者では高温状態が続くと体力を消耗してしまうことも事実です。
 高熱は、ちょうど真夏の炎天下で長時間マラソンをしているのと同じ状態です。解熱剤で一時的に熱を下げることにより、体力の消耗を少しでも防ぎ、回復を助けることが大事な場合もあります。
 日本小児科学会は、「インフルエンザにおける解熱剤の使用については、慎重に行なうこと、そして使用するのであれば、安全性の高いアセトアミノフェンを」と推奨しています。
 インフルエンザにかかったら、まずは十分な休養と栄養、水分の摂取、そして寒気が強い場合は体を温めること、熱が出てきたら腋の下や首の後ろを冷やすこ となどがすすめられています。さらにようすをよく観察して、解熱剤がどうしても必要な場合は、小児も大人もアセトアミノフェンを使用するのが適切だと思わ れます。

いつでも元気 2002.5 No.127

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