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2015年12月8日

副作用モニター情報〈450〉 抗うつ剤ミルナシプランによる「排尿障害」

 ミルナシプラン(先発品:トレドミン錠)は2000年10月にSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)として国内で初めて発売された抗うつ剤です。既存の三環系、四環系抗うつ剤に比べ、抗コリン性の副作用が少ないことが期待されました。
 当副作用モニターには、発売以降
102件の副作用報告があり、尿閉、排尿困難などの「排尿障害」が17件ありました。
 本剤は、開始用量の再確認を含めた用量反応関係の確認や、臨床的特徴の検証を目的とした市販後臨床試験が承認条件として課せられ、イミプラミンやパロキセチンとの比較試験が行われました。2008年の再審査時には、早期中止に至る胃腸障害の副作用を軽減する目的もあり、成人、高齢者ともに開始用量が25mg/日に減量されました。また、市販後臨床試験結果について、三環系抗うつ剤イミプラミンに比べ抗コリン性の副作用が有意に低かったと添付文書に記載されています。しかし、口渇の発現率は低いものの、排尿障害は約10%で、イミプラミンと同等でした。
 排尿障害の報告17件のうち、5件が開始日に発現していることが特徴です。開始用量は減らされましたが、やはり投与開始初期に注意が必要です。また80代女性で、尿閉から腎後性腎不全に至った症例の報告があります。
 発現した仕組みは、直接的な抗コリン作用よりも、ノルアドレナリン再取り込み阻害によるα1受容体刺激によると報告例から考察されています。
 その他の副作用報告は、吐き気、嘔吐などの消化器症状21件、血圧上昇・動悸15件、過敏症16件であり、口渇の報告はありませんでした。同じSNRIのデュロキセチン(製品名:サインバルタカプセル)は、全報告38件中、尿閉については1件のみであり、セロトニンとノルアドレナリンに対する選択性の違いがうかがえました。

(民医連新聞 第1609号 2015年12月7日)

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