くすりの話

2005年5月1日

くすりの話 79 漢方薬ってどんなもの?

Q:そもそも漢方ってどういうものですか?

A:漢方という呼び名は、江戸時代に渡来したオランダ医学を「蘭方」と呼んだのに対し、日本の医学を中国の後漢の時代(3世紀初頭)に起源を持つ医学として「漢方」と呼んだものです。
  名前からもわかる通り、漢方のルーツは中国です。その後、漢方は江戸時代の中期に日本独自の医学として発展しました。さらに明治、大正、昭和と苦難の時代 に西洋医学の影響も受けながら、漢方は日本固有の伝統医学の地位を築きました。
  漢方には漢方薬による薬物療法の他、針や灸による治療、および養生の三部門があります。

Q:漢方薬の特徴は?

A:漢方薬は自然の材料である天産物を使うことが特徴の第一です。漢方薬は薬用植物(一部動物や鉱物も使う)の薬用部分を乾燥して刻んだ生薬が材料です。この生薬を何種類も組み合わせて、処方名がついた漢方処方ができています。
  たとえば葛根湯や小柴胡湯は7種、十味敗毒湯や十全大補湯は10種類の生薬の組み合わせです。
  天産物である生薬も、生薬を組み合わせた漢方薬も、その薬効成分は単純ではありません。日常の食べ物もそうですが、天産物であり、単純でないのがよいところです。
  これは西洋医学で使う西洋薬のほとんどが単味の化学物質であったり、民間療法で使う民間薬が1種類の生薬のみを使うのとは対照的です。
  また、漢方には生き物が備えている自然治癒力を大切にする特徴的な考え方があります。常日ごろから養生をして体調を整えておけば、ちょっとした体調不良は 自然治癒力により治ります。正しい食事と睡眠、適度な運動が大切です。
  自然治癒力では回復しない場合、漢方薬の出番となります。体調不良を回復し予防する根源は、薬ではなく患者自身であるという考え方です。

Q:漢方薬はすぐには効かないのですか?

A:漢方といえども、風邪を治すのに長時間かかるようでは誰も相手にしません。漢方は明治維新以降、制度的には日陰の存在になったため、「漢方はすぐには効かないものだ」などの認識不足、誤解を人々の間に生むことになりました。
  すぐに効くかどうかは、病の性質によります。漢方は急性病にも慢性病にも、ある意味では西洋医学以上にきめ細かく一人ひとりの患者さんに対応できる治療体系を備えています。
  何が何でも漢方薬とは言いません。西洋薬と漢方薬を比べると一長一短があります。相互に長所を生かして補完しながら治療効果をあげれば、高齢社会の医療経 済にもよい結果をもたらすように思われます。 (つづく)

いつでも元気 2005.6 No.164

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