くすりの話

2001年2月1日

くすりの話 45 ピロリ菌除菌が保険適用に

Q:胃潰瘍で困っている人がいます。なぜ潰瘍はおこるのですか。薬についても教えてください。

A:食べ物を消化する胃液の主成分は、強酸性の塩酸とペプシン、そして粘液です。その胃液が、自分自身の胃や十二指腸を消化してしまうのが潰瘍です。
 胃の粘膜が塩酸とペプシンで消化されないように、粘液が保護しています。塩酸とペプシンを攻撃因子、粘液を防御因子といい、このバランスが保たれていれば潰瘍はおこりません。
 バランスを崩す原因はストレスやアルコール、喫煙などがありますが、もっとも問題なのはピロリ菌と消炎鎮痛剤です。消炎鎮痛剤は痛みを抑える一方、胃粘 膜を保護している物質も減らし潰瘍がおきます。ピロリ菌の毒素は胃粘膜に炎症をおこし、防御機構を破壊します。したがって、薬で潰瘍がいったん治っても、 ピロリ菌がいるかぎり再発します。
 胃・十二指腸潰瘍の薬は、このバランスを修復するために使います。攻撃因子を弱める薬はランソプラゾール(商品名タケプロン)、タガメット、ザンタッ ク、ガキトロゼピンなど。粘膜を保護したり、粘液分泌を促進する薬には、アルサルミンやゲファニール、セルベックスなどがあります。
 現在は、H2ブロッカーなどの攻撃因子を弱める薬が主流です。

Q:ピロリ菌の除菌療法が保険適用されたと聞きましたが?

A:胃のなかは酸が強く、長い間、細菌は存在できないと思われていましたが、1982年にオーストラリアの研究者によって、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が発見されました。

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ピロリ菌に感染しても、多くは軽い胃炎をおこすだけで、潰瘍を発症する人は2~3%です。しかし、胃潰瘍の患者さんの90%、十二指腸潰瘍では100%近い患者さんがピロリ菌に感染していることがわかっています。
ピロリ菌の除菌には、3種類の薬剤を1日2回7日間服用する「3剤併用療法」が有効です。
ランソプラゾールで胃酸分泌を抑え、2種類の抗生物質アモキシシリンとクラリスロマイシンでピロリ菌を殺します。アモキシシリンはペニシリンの仲間で商品 名はパセトシン、サワシリン、アモキシシリンなど、クラリスロマイシンは商品名クラリス、クラリシッドです。
昨年の11月1日から、ピロリ菌が胃のなかにいるかどうかの検査とピロリ菌が除菌できたかの検査が保険適用され、これで保険で治療できることになりました。対象は、胃潰瘍と十二指腸潰瘍です。
これまでは、胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカーを飲み続ける治療法がありましたが、潰瘍の再発率は20~25%でした。除菌による再発率はかなり減少する ようです。上図はヘリコバクター学会が発表した1年以内の再発率です。
3剤併用療法は抗生物質を中心とした治療なので、しっかり服用しきることと、抗生物質の副作用、とりわけペニシリンの過敏性や下痢などに注意する必要があります。

いつでも元気 2001.2 No.112

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