くすりの話

2000年7月1日

くすりの話 39 薬になる血液

Q:薬害エイズは血液製剤が原因でしたが、血液製剤とはどういうものですか?

A:血液は赤血球や白血球、血小板などの血球成分と、血漿成分から成り立っています。赤血球は酸素を全身に運び、白血球は細菌などの外敵から体を守り、血小板 は他の凝固因子とともに血栓をつくって出血を防ぎます。血漿成分には水分、タンパク質、脂肪や免疫に関する成分が含まれます。
 飲み薬や注射薬で十分治療の効果が期待できないときに、血液からつくった製品を薬として使用します。それが血液製剤です。
エイズを発症させるHIVウイルスの混入した血液製剤は、おもに血友病の患者さんに使われました。
血友病は、生まれたときから血液を固める成分が不足しているためにおこる病気です。治療には、その成分を補うために、血液製剤が使われます。
日本では、国内で提供された2~3人分の血液から1本の血液製剤がつくられてきました。しかし、1980年ころから、値段が安いなどの理由で、国内産より も海外(主としてアメリカ)から輸入した血液製剤が多く使われるようになりました。
ところが海外からの製剤には、重大な欠陥がありました。ウイルスなどの病原菌を除去する処理が不十分だったのです。しかも製剤は、1000人規模の血液を まとめてつくられるため、病原菌をもった人の血液が1人分でも混ざると多くの血液製剤にその病原菌が混入する危険がありました。
安全な製剤をつくるには、加熱して病原菌を殺す処理が必要です。世界で加熱処理の技術は1968年に開発されていましたが、日本で加熱処理されるように なったのは20年も遅れた1987年からでした。厚生省や製薬会社の怠慢で対応が遅れ、「薬害エイズ」という、とりかえしのつかない被害が拡大したので す。

Q:ほかにも、血液が薬として使われる場合があるのですか?

A:血液製剤として使われるおもなものは、大量出血時の赤血球製剤、栄養障害時のアルブミン製剤、ウイルス感染の予防や症状を軽くするためのグロブリン製剤などです。
現在、血液製剤は、成分ごとに使用される機会が多くなりました。献血のとき「成分献血」という区分けがされているのは、必要な成分を必要なだけ投与するた めです。おもには輸血用として、血小板や赤血球などにわけられます。
人の血液のなかには、未知の病原菌が含まれている可能性があり、より厳重な安全対策が必要です。そのことから、血液からできた製品を薬(医薬品)として安 易に使用することに、疑問の声もあがっています。血液は人体の一部であるから、「臓器」として扱うべきだという見解です。安全性を考えて、最近では、手術 時などに、あらかじめ自分の血液を採血しておいて使う「自己血輸血」が多くなっています。

いつでも元気 2000.7 No.105

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