くすりの話

1997年2月1日

くすりの話 2 抗生物質ってなに?

Q:「抗生物質」という言葉、よく耳にします。それって何ですか?

A:抗生物質とは、細菌などの微生物の成長を阻止する物質のことで、肺炎や化膿したときなどの細菌感染症に効果があります。
 1929年に青カビのつくるペニシリンという物質が、感染症の原因となるブドウ球菌などの発育を抑えることが発見されました。これが抗生物質のはじまりで す。抗生物質の発見は画期的で、不治の病とされた結核も、ストレプトマイシンの発見で克服されました。
 「抗生」とは、生命に拮抗するという意味で、病原体の生命(細胞)と拮抗して病原体を殺すということです。人体の細胞に毒でないものが治療薬として使われます。

Q:はじめは「抗生物質を1日3回8時間ごとに飲んでください」といわれたのに、次に受診したとき「毎食後30分」といわれました。どうして指示が変わるのですか。

A:はじめにいわれた「8時間ごと」という意味は、一定時間に薬を飲むことによって、血液のなかで抗生物質の濃度を一定に保ち、細菌が発育する環境をつくらせないことをねらっています。
 しかし、「8時間ごと」では、目覚まし時計をセットして、夜中に起きて飲むということにもなりかねません。それでは、病原菌とたたかっている体に負担をかけることになります。
 十分な睡眠を確保して、体がほんらいもっている自然治癒力を高めてやることが必要です。
 外来で治療している場合には、「毎食後30分」でも効果は期待できます。

Q:「抗生物質を飲み過ぎると効かなくなる」「日本では抗生物質を使いすぎる」と聞きました。1歳の子どもの中耳炎が治らず、2カ月も抗生物質を飲みつづけているのですが、とても心配です。

A:新しい抗生物質が開発され、細菌感染症は征服されたかにみえても、細菌はすさまじい生存競争をくりひろげ、「生き延びる」ためにみずからを進化させる術を身につけてきました。これを「耐性」といいます。「抗生物質の歴史は耐性菌とのたたかいの歴史」ともいわれます。
 どの薬も効かない細菌が現れている事態を謙虚に受けとめて、感染症の克服を将来にわたって確実なものにするために、抗生物質の安易な使用をやめ、耐性菌を 出さないために国をあげて治療法を検討する時期にきています。
 抗生物質を長く飲みつづけると、細菌が耐性化したり、別の細菌に入れ替わったりすることがあります。これをさけるために、どの菌が原因で、どの抗生物質が 効果あるかを検査しながら治療をすすめる必要があります。
 中耳炎の場合、侵出性中耳炎ですと、抗生物質を長期間投与することもありますので、一度医師に納得のいく説明を受けてみてはいかがでしょう。

いつでも元気 1997.2 No.64

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