健康・病気・薬

2016年4月5日

副作用モニター情報〈455〉 不眠治療薬ベルソムラの副作用と投与量

 スボレキサント(商品名:ベルソムラ)は、覚醒や睡眠の調節に重要な働きをするオレキシンの受容体拮抗薬です。続けて服用すると依存の恐れがある「習慣性医薬品」に指定されています。薬効の出るしくみが新しく、酵素CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾールなど)とは併用が禁じられています。日本では、米国より開始用量が多く設定され、錠剤も分割できない形状で用量調節が難しく、過量にならないよう注意が必要です。
 各国が共同して行った試験では副作用が20.9%(53例/254例、うち日本人61例)に現れ、主に傾眠(4.7%)、頭痛(3.9%)、疲労(2.4%)の内訳でした。市販直後調査では851例1427件の副作用があり、重篤なものは29例57件。「傾眠」が201件と最も多く、「悪夢」148件、「中期不眠症」92件、「頭痛」79件、「浮動性めまい」50件でした。当モニターには、以下の報告が届いています。
症例)80代女性。マイスリーを服用していたが睡眠リズムが乱れ、ベルソムラへ変更。1週間服用し、服用初日と翌日だけだったが悪夢をみた。継続して悪夢は無いが日中に非常に眠くなり、4週間服用した後マイスリーに変更し症状改善。

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 市販後調査での悪夢と異常な夢が現れた時期が分かっているケースについては、ほとんどが1週間以内に発現し、服用後比較的早期に症状が現れると考えられます。ベルソムラはノンレム睡眠だけでなくレム睡眠も増加させるため、レム睡眠に関連した悪夢や睡眠時随伴症などの副作用があるようです。なお回復症例では、85%が服用を中止しています。継続した症例20件では13件が回復・軽快しており、症状が出たのは1日だけでその後は発現していません。
 傾眠については、症状の現れた時期が分かった171件のうち81%が起床時~午前中で、うち83%は昼までに回復していました。分かっているだけで回復症例の73%が投薬を中止することで回復していました。多くが午前中に症状が継続し、ほぼ1日中継続する例もあるため、他剤への変更が必要でしょう。
 新しい機序の薬剤であるため、今後も未知なる副作用に十分な注意が必要です。

(民医連新聞 第1617号 2016年4月4日)

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