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2016年6月21日

金持ちの課税逃れを放置し、国民に増税や負担増はおかしい タックスヘイブンって何!? 大門みきし参院議員(共産)に聞く

  パナマの法律事務所の租税回避行為に関する機密文書「パナマ文書」(※)が流出し、世界各国の大企業や大金持ちが課税逃れをしていることが発覚、大問題となっています。日本の企業や実業家の名前も。何が問題? その手口は? 五月の国会でタックスヘイブンの実態を暴露し、答弁した麻生太郎財務大臣に「ものすごくわかりやすい説明だ」と言わせた、大門実紀史参院議員(共産)に聞きました。(田口大喜記者)

■タックスヘイブンとは

 世界には、税金が無い、または税率が極端に低い国や地域があり、これを「タックスヘイブン(租税回避地)」と呼びます。
 世界の大企業や富裕層が、こうした地域や国にペーパーカンパニー(実態のない幽霊会社)を設立して課税逃れを行い、その額は法人税だけで二〇~三〇兆円と言われています。
 金融規制が緩いこともタックスヘイブンの特徴です。日本では高リスクのため規制されるような、金融商品への証券投資が可能です。それで大企業などがペーパーカンパニーをつくり、ここで内部留保などを運用しているのです。いわゆるマネーゲームです。
 このように、タックスヘイブンには投資で出た利益を、本国からの税を逃れて得る仕組みがあります。
 「パナマ文書」流出の報道で、タックスヘイブンでの租税回避は広く知れ渡りましたが、これは実は何十年も前から行われていて、国際的にも議論されてきました。

■課税逃れが合法に

 これまで、各国が対策を行ってこなかったわけではありません。「タックスヘイブンに子会社を作った場合、親会社の利益と合算して税金をかける」という「タックスヘイブン税制」などを導入しています。ところが、課税逃れをする側は手口をさらに複雑・多様化させ、対応が追いついていないのです。
 日本の大企業、富裕層の場合、最も積極的に証券投資をしているのはパナマではなくケイマン諸島です。
 どうやって課税を逃れるのか? 私が国会質問で初めて明らかにした手口のひとつを説明します。
 ケイマン諸島で使われている仕組みは「慈善信託=チャリタブル・トラスト」です()。まずは、親会社がケイマン諸島に設立したペーパーカンパニーの株式を信託会社に信託します。通常なら子会社の利益は親会社の利益に合算して、課税逃れを許さない法律がありますが、「信託」というかたちを悪用し、親会社と子会社の資本関係を切り離すわけです。
 この信託会社が、国際赤十字でも、とりあえずつくった慈善団体でもいい、そこへの信託を宣言すれば、形式上、株式の受益者は「慈善団体」になります。しかし、子会社は利益を慈善団体には渡しません。慈善団体も自分から利益は求めませんから、子会社の利益は税金もかからず子会社に蓄積されていきます。貯まった利益を最終的にどう還元するかというと、また、他の国のタックスヘイブンや資産管理会社を使う、という具合です。

図

■日本はどうか

 日本からのケイマン諸島への証券投資額は六三兆円です。ペーパーカンパニーは分かっているだけで五二四社にのぼります。
 安倍政権発足後、日本のケイマンへの投資は約二〇兆円も増えました。これはアベノミクスが大企業や富裕層を儲けさせ、だぶついたお金はマネーゲームに使われたということです。
 どの程度の税金逃れがあるのか、情報はブラックボックスで正確には割り出せません。しかし、少なくともケイマンのペーパーカンパニーにきちんと課税すれば、消費税を一〇%に増税する必要がなくなる規模の税収は入ると見られます。
 日本含め、各国で対策が議論されていますが、相手は世界の「支配層」。パナマ文書にも一国の首相の名前があがるほどです。支配層が抵抗するのですから、簡単な話ではありません。
 そろそろ、企業は稼いだ国で税金を納め、社会に貢献する当たり前の対応をするべきです。社会保障や貧困対策に税金を充てることができなければ、貧困と格差は広がる一方です。

*    *

 日本に引き寄せても、こうした企業・富裕層の税逃れを放置する一方、国民に増税を押しつけることは許されません。税の公平性の問題です。「お金持ちからお金をとる」ためのルールづくりが急がれています。


パナマ文書…パナマの法律事務所で租税回避に関する取引を扱った文書で、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した。国家の元トップや親族、著名人などの名前もあり、アイスランドの首相は辞任した。


だいもん・みきし
 京都生まれ。2001年の参院選で初当選。主に経済、金融、消費者問題にとりくむ

(民医連新聞 第1622号 2016年6月20日)

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