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2016年8月16日

副作用モニター情報〈464〉 山梔子(サンシシ)含有漢方製剤の長期投与に伴う腸間膜静脈硬化症

 山梔子含有漢方製剤の黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)による腸間膜静脈硬化症の報告がありました。黄連解毒湯は、体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色が赤っぽく、いらいらする傾向がある人の胃炎、二日酔い、不眠症、神経症などに用いられます。
症例)精神不安定のため、少なくとも7年以上前から黄連解毒湯を服用していた患者。3年ほど下痢症状が時おり現れ、そのつど、整腸剤や下痢止めを処方していた。便潜血検査で陽性、大腸内視鏡検査で盲腸から上位結腸に暗紫状粘膜、静脈拡張を認め、腸間膜静脈硬化症を疑い黄連解毒湯を中止。1カ月後に治癒を確認、その後は症状無し。

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 腸間膜静脈硬化症は、大腸壁内から腸間膜の静脈に石灰化が生じ血流が阻害されることで腸管が慢性的に虚血状態になる疾患です。症状は、右側腹痛、下痢、悪心・嘔吐や便潜血陽性(無症状)があり、重いものではイレウスもあります。
 原因は、山梔子の生薬成分であるゲニポシドだとみられています。大腸の腸内細菌がゲニポシドを加水分解し、ゲニピンを生成。ゲニピンが大腸から吸収され腸間膜を通って肝臓に到達する間にアミノ酸やたんぱく質と反応し血流をうっ滞させ、腸管壁の浮腫、線維化、石灰化、腸管狭窄を起こすと考えられています。
 2013年に厚生労働科学研究が全国調査の結果を報告し、腸間膜静脈硬化症患者の8割以上が山梔子含有漢方薬を服用し、その内9割以上で服用期間が5年以上だったことを明らかにしています。
 13年と14年には「使用上の注意」の改訂指示が出されました。現在、山梔子を含有する製剤で腸間膜静脈硬化症が「重大な副作用」に記載されているのは、加味逍遥散(カミショウヨウサン)、黄連解毒湯、辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)、茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)です。
 山梔子を含有する漢方製剤はこの4種以外にもあります。それらを5年以上長期投与している患者が、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満感、嘔気・嘔吐等を繰り返す、または便潜血陽性になった場合は投与を中止し、CT、大腸内視鏡などの検査をし適切に処置することが必要です。漫然とした長期処方は見直し、継続する場合は1~2年に1度程度の定期的な大腸内視鏡検査を実施してください。 

(民医連新聞 第1626号 2016年8月15日)

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