くすりの話

2016年8月31日

くすりの話 193 関節痛にグルコサミンは効かない

genki299_22_01 グルコサミンは、ひざの痛みなど関節痛の軽減を期待され売れています。20年ほど前から広まり、最近では大手食品メーカーだけでなく製薬会社も販売するようになっています。その売り上げは、2013年の調査で497億円に達します。

軟骨の原料ではあるが…

 関節痛は、骨と骨のクッションになる軟骨がすり減り、骨同士が直接当たってしまうことが主な要因です。多くの広告は「グルコサミンには軟骨を再生する効果がある」と謳っています。
 グルコサミンは、軟骨の成分「ヒアルロン酸」を構成する2種類の糖のうちの1つです。軟骨は主柱となるタンパク質の「コラーゲン」、それを束ねる「ヒアルロン酸」と水分を保持する「コンドロイチン硫酸」などの糖鎖で構成されています。糖鎖に使われる成分は、基本的にブドウ糖を原料として体内で合成されます。
 代謝でみると、成人女性に必要とされる摂取カロリーは1日約2000キロカロリー。その食事の6割が糖質として、300グラムのブドウ糖がエネルギーと生体組織の合成に使われています。そこにわずか1~2グラムのグルコサミンを摂取して、関節の軟骨に十分な量が届くと考えるのには無理があります。

有効性を示せない研究実績

 「効果がある」と信じて飲むことで、有効成分が入っていない偽薬(プラセボ)でも高い効果を示すことがあります。そのため医薬品開発では、患者と効果を判定する医師にどれが本物かを知らせず、治験薬と偽薬を無作為に投与して効果を比較する「二重目隠し試験」を実施します。近年、大規模な試験において、グルコサミンの有効性を否定する論文が続いています。
 中立の立場にある国立健康・栄養研究所のデータベースにある最新の2015年8月の論文では、肥満女性407人に1日1.5グラムの硫酸グルコサミンと偽薬を30カ月間投与した結果、偽薬と比べて関節に対する効果は見られませんでした。
 現状は、医薬品であれば開発失敗で撤退する状況でしょう。

期待感だけで買うのは、もったいない

 利用者の主観で調べる関節痛の軽減は、偽薬でも高い効果を上げることがあります。「効いている」と感じている方は良いのですが、効いたかどうかわからないのに飲み続けるのは、ムダです。
 グルコサミン関連商品は前年比7%以上の売上増が続いています。販売企業は広告費に使うお金で、きちんとした効果の実証をする社会的責任があると思います。

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いつでも元気 2016.9 No.299

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