くすりの話

2003年12月1日

くすりの話 68 米国くすり事情あれこれ(1)

 先月号で少しふれましたが、6月に民医連の保険薬局の職員有志で米国の薬局見学をしてきました。今回はその時に見聞きしたことについて、いくつかお話しします。

処方薬をカナダに買いに行く

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24時間営業で米国最大手のチェーンドラッグストア・ウォールグリーン

 国境を越えて薬の買い出しがあるとは聞いていましたが、ツアーまであるとはおどろきでした。カナダ国境に 近い人はカナダへ、メキシコ国境に近い人はメキシコへ、医師の処方せんでもらう処方薬を買い出しに行くとのこと。その参加者は、高齢者がほとんどです。米 国の公的老人保険(メディケア)では、薬代については保険の対象外になっているため、少しでも安い薬を求めてのことです。
 同じ製薬会社の同じ薬でも、カナダは平均して米国の半分の価格。とくに新薬になればなるほどその格差は大きくなります。これは、製薬会社が自由に価格設 定をする米国と比べ、カナダ政府には薬価審査委員会があり、薬の値段を強力に規制しているためです。
 薬局でも医薬品をカナダから逆輸入して調剤するところもあり、カナダ国境から遠い人でもカナダからの医薬品を使用しています。
 米国の製薬会社はカナダ政府に、米国より安い値段で米国人に薬を調剤するのをやめるよう要求し、やめなければ供給しないと圧力をかけましたが、成功していません。

テレビでも処方薬のコマーシャルが

 ホテルでテレビを見ていると、医師の処方がなくてはもらえないうつ病薬のCMが商品名を出して、一般向けに流されていました。
 日本では、副作用が強いので安全面から医療関係者以外への宣伝は現在禁止されています。それが米国では一般国民向けにどんどん宣伝されているのです。
 テレビやラジオのCMでは時間が短いことから、効果だけが強調され、副作用など安全性にかかわる情報が小さく扱われてしまいがち。米国ではこの処方薬の 宣伝が、国民に少なからぬ混乱をもたらしています。

日本に帰っておどろいた

 おどろいたのは、日本に帰ってきてからのことです。ホテルのテレビで見た、同じ薬の宣伝が、日本のテレビでも流れていたのです。もっとも、商品名こそ出ていませんでしたが。
 このように最近では日本でも薬品名は出しませんが、特定の病気への治療薬の紹介や、治験(認可前の薬を人が飲んで効果や副作用を調べる)への募集という かたちで徐々にテレビや新聞紙上で宣伝が行なわれていて、そのうち米国のように全面解禁になるのでは? といわれています。
 なんでも米国のまねをするのは、薬の安全性や有効性の点から問題があるのではないでしょうか。

いつでも元気 2003.12 No.146

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