くすりの話

2005年7月1日

くすりの話 80 漢方薬が向く病気とは?

Q:漢方薬はどんな病気に向きますか?

A:西洋薬と漢方薬をくらべると、一長一短があることは前回お話しました。はっきりとした線引きはできませんが、「この病は西洋薬がよい、この病は漢方薬が適している」というためには、西洋薬と漢方薬の特徴を知ることが重要です。
 西洋薬の代表は抗生物質です。細菌感染の治療では漢方薬よりも効果があります。ステロイドなどの抗炎症剤が効く疾患の場合も同様でしょう。
 しかし抗生物質などが体質に合わない人もいます。また、西洋薬治療の結果が思わしくないとか、いったん治っても同じ病状をくり返し、やがて慢性化するような場合は、漢方薬の出番です。
 漢方治療の特徴は、身体の異常をよく観察して、自然治癒力を発揮させて治すところにあります。自然治癒力(生命力)が弱い場合、漢方薬はこれを補います。
 何回もくり返す中耳炎、治りきらない膀胱炎、蓄膿症、扁桃腺炎、更年期障害をはじめとした女性特有の諸症状などは、漢方薬で治したり、漢方薬と西洋薬を併用した方がよい病気です。

Q:西洋薬で治らない重症化した病気に向くのですか?

A:むしろ逆です。病気の 原因を身体の内部の異常(内因)に求め、これに作用するのが漢方薬の特徴です。漢方では、冷え、ほてり、のぼせ、頭痛、肩こり、しびれ、便秘、動悸、めま い、食欲不振など、ごく軽い自覚症状の訴えをよく聞き、顔色や動作などもよく観察して、重症にならないうちに不健康な状態を健康な状態に戻します。
 漢方では「未病を治す」といいます。予防医学の概念です。「ころばぬ先の杖」と同じ意味です。重い病気はどんな医師でもわかりますが、軽いうちに治せば理想的というわけです。医療費も安くすみますから、医療経済的にもプラスです。
 高齢社会を迎えた21世紀は、予防医学が重要になるでしょう。漢方薬が出番の時代です。

Q:原因不明の症状に漢方薬がよいとききますが。

A:そうですね。検診などで「異常なし」といわれて悪いところが見つからなくても、体調が優れない場合は漢方治療を検討してもよいでしょう。
 また、西洋医学的に原因不明であったり、根本的な治療がむずかしい慢性病もあります。
 たとえば、神経痛はじめさまざまな頭痛。耳鳴り、めまい、難聴、嘔吐などのメニエール症候群。神経症、糖尿病、肝炎、腎炎、気管支ぜんそく、慢性皮膚炎、胃下垂、慢性の下痢などです。
 これらも何らかの形で漢方治療が関与することで、西洋医学とは異なるアプローチができ、治療効果があがる場合があります。大切なことは、漢方薬を漢方的 に使うことです。漢方薬を病名によって安易に使うのではなく、体質や症状を丁寧に把握して、自然治癒力(生命力)を補う観点から漢方薬を活用することで す。 (つづく)

いつでも元気 2005.7 No.165

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