くすりの話

2005年9月1日

くすりの話 81 漢方薬にも副作用がある?

Q:前回、漢方薬は病名で使うのではないとのことでしたが。

A:もちろん、病名は参考にします。ただ、同じ病名でも体質や症状、病気になってからの経過や病気に対する体の反応などをよくみて、きめ細かく処方してこそ、漢方薬は真価を発揮します。
 たとえば、かぜ薬として葛根湯が知られています。葛根湯は、かぜのひきはじめに使いますが、誰にでも使うわけではありません。葛根湯は、悪寒・発熱・頭 痛などがあって肩や首筋がこわばり、しかも自然に汗が出ないような体質に働きかけます。同じように発熱や頭痛などがあっても、汗が自然に滲み出るような体 質の場合は、桂枝湯を使います。体力がなく、熱はないが寒気ばかりする高齢者などには、かぜのひきはじめから真武湯を使います。
 ほとんど治ったが、まだ少しかぜぎみだという場合には柴胡桂枝湯を用います。柴胡桂枝湯は体力・免疫力を補い、かぜの予防にもなります。

Q:漢方薬にも副作用があるのですか?

A:漢方薬は私たちが毎日 食べる食事と同じように材料が自然界のものですから、化学物質が材料になっている西洋薬よりも、私たちの体になじみやすい点が特長です。そのため、西洋薬 では薬で胃が荒れないように、食後に服用することがほとんどですが、漢方薬は一般的に食前、または食間(食事と食事の間)の空腹時に服用します。
しかし、漢方薬にも「禁忌」という言葉があります。たとえば妊娠中の患者さんにはむやみに冷やしたり下したりする処方や生薬は用いません。
 また、毒性が強い附子(トリカブトの根)やエフェドリンが主成分の麻黄、下剤成分を含む大黄、解熱や渇きを癒すときに重要な石膏などは、特別に注意して体質や症状をよくみて使う必要があります。
 漢方の古典は、「誤治」を厳しく戒めています。病気を治すために正確な診断や治療が必要ですが、体質を間違えて反対の治療をすると、かえって悪い症状が 出ることがあります。これが漢方薬の「副作用」です。漢方薬そのものに副作用があるというより、使い方が副作用を生むのです。

Q:「小柴胡湯は要注意」と聞きましたが。

A:1996年(平成8 年)に、小柴胡湯により間質性肺炎を起こして死亡したという副作用が報じられました。小柴胡湯はほとんどの場合、肝障害に対して処方・投与されていました が、当時の日本における漢方薬の年間総売上1600億円のうち、小柴胡湯が5分の1以上を占めるという異常さでした。小柴胡湯の乱用があったことは明らか です。
 小柴胡湯はエキス剤として投与されました。エキス剤の便利さは結構ですが、漢方薬の正しい使い方が大切であることを物語っています。

いつでも元気 2005.9 No.167

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