くすりの話

2006年7月1日

くすりの話 88 薬の値段は高すぎる?

 薬九層倍 =くすりくそうばい(薬の値段は原価にくらべて異常に高い)という言葉がありますが、本当ですか? 民医連の考え方を教えてください(70歳男性)。

Q:薬の値段はどのように決まるのですか?

A:薬には、医療機関向けと薬局で購入できる一般向けがあります。ここでは保険診療で使われる、医療機関向けの薬の値段(薬価)がどう決められるのか説明しましょう。
 保険診療で使う薬は、メーカーの資料にもとづき、国が薬価を決めます。薬価が決まるしくみは、主に2つあります。ひとつはすでに使用されている類似薬と 比較して値段を決める「類似薬効比較方式」です。もうひとつは比較する薬がない場合で、材料費や製造経費などから計算する「原価計算方式」です。後者の方 式で薬価が決められた代表が、肺がん治療薬のイレッサです。
 イレッサは2002年8月に保険が適用され、何と1錠7216円もの薬価がつきました。「イレッサは輸入品だから高くなった」と説明されていますが、原価は公表されていません。
 原価計算方式では、薬価を決める過程が、いわばブラックボックスになっています。

Q:医療費に占める薬剤費が、年々上昇していると聞いていますが?

A:薬価は2年に1度改定 されますが、この20年間、改定の度に引き下げられています。しかし、医療費に占める割合は年々上昇しています。今日では国の医療費の25%、約8兆円に なっています。薬価が下がっているのに国の薬剤費が伸びている背景には「新薬シフト」があります。保険診療で使われる薬が新しいものへ移っていく現象で す。
 薬にも特許があり、特許期間が終わると先発品より安い後発品の販売が許可されます。先発品を製造する製薬会社は、引き続き売り上げを確保するため、元の 先発品を少し改良した「ゾロ新薬」といわれる新薬をつくり、売り込みます。この戦略に多くの医師も巻き込まれ、結果的に「新薬シフト」が起きます。ほとん どの新薬は画期的といえるものではありませんが、薬価は従来品と同等か高めに設定されているため、医療費に占める薬剤費が上がり続けるのです。

Q:薬価について民医連としてどうすべきと考えているのですか?

A:日本の薬価は欧米に比べて高いと批判されています。日本最大の医薬品メーカーである武田薬品工業の2005年3月期の決算では、経常利益率は約4割となっています。つまり、1万円の売り上げで約4000円(税引前)も利益があるのです。
 利益は確保すべきでしょうが、4割もの利益が妥当なのでしょうか。また、その利益のために不当に高い薬価がついていないのかも疑われます。
 民医連としては、医療費を抑えるためにも高すぎる薬価を是正すべきだと考えています。そのためにも、原価が公表され、国民・患者が納得できる薬価の決め方が確立される必要があります。

いつでも元気 2006.7 No.177

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