くすりの話

2007年7月1日

くすりの話 98 タミフル問題の背後には?

Q:インフルエンザ治療薬「タミフル」で、服用後の異常行動や死亡が相次ぎ大問題になりましたね。厚労省の態度は、現在どうなのでしょうか?

A:国民の厳しい批判のな かで、3月20日、「10歳以上の未成年の患者には、原則としてタミフルの使用を差し控える」旨の緊急安全性情報を出しました。そして「因果関係は否定 的」としてきたこれまでの見解をやっと見直し、寄せられた副作用報告を再調査することを表明しました。
 4月25日までに厚労省が公表したタミフル服用後に異常行動を起こした患者は186人と、4月初めの発表から58人増え、うち転落が26人。副作用の疑 いは1268人と189人増え、死亡が70人と15人増えました。
 厚労省は10代への投与のみを制限するといっていますが、異常行動が記録された人186人のうち、10代は96人と約半数で、残りの半数は10代以外のすべての年代にわたっています。
 また死亡事例には、異常行動による事故死8人以外にも、小児や成人の突然死の事例が11件あり、死亡事故を防ぐための使用制限を「10代」に限定する根拠はどこにもありません。

Q:厚労省はなぜ、副作用の要因などを分析しないまま放置し続けたのですか?

A:1つには、死亡例は問題にするが、副作用全体は軽視する、という厚労省の体質があります。さらに過去の薬害事件と同じく、製薬会社と「政官学」の癒着の構造が、今回も浮かび上がっています。
【政】タ ミフルの承認・販売開始の 2000~02年だけで、中外製薬から自民党の政治資金団体に656万円の政治献金。さらに製薬会社でつくる製薬産業政治連盟を通して、2000~05年 にパーティー券購入や寄付金の形で巨額の金が閣僚など関係する国会議員に渡っている。安倍首相には3360万円。
【官】厚労省の新薬の承認申請を担当していた元課長が、中外製薬の役員として天下っている。
【学】厚 労省が因果関係を否定する根拠とした 調査結果をまとめた調査研究班の班長ら3人に、輸入販売元の中外製薬から総額7600万円の寄付金が渡っていた。厚労省の安全対策調査会に参考人として出 席し、「タミフルに問題はない」と発言した大学教授にも600万円の寄付がされていた。

 タミフルは、新型インフルエンザ対策として国と都道府県で2500万人分を備蓄する計画がすすめられ、そのために膨大な予算が投入されていました。過去5年間の使用量は、日本が世界の77%を占めるという異常さです。
  タミフルを開発したのは米国のギリアド・サイエンシズ社。ラムズフェルド前米国防長官がこの会社の元会長だったと聞くと、疑惑と癒着の構造の根深さに、がく然とします。
  国民の命と安全を守るために、製薬企業への天下りと政治献金は直ちに禁止すべきですし、輸入・承認から問題発覚までの関係者の行動、発言、かかわり方などの全容の解明が必要です。

いつでも元気 2007.7 No.189

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