くすりの話

2008年3月1日

くすりの話 104 「ヒアルロン酸」は飲むものか?

Q:最近、「ヒアルロン酸」ってよく聞きますが…

A:美肌効果を期待されているサプリメントとして、「コラーゲン」と並んで「ヒアルロン酸」がいま注目の的です。1gのヒアルロン酸が2~6の水を保持する高い保水能力で、肌の乾燥を防ぎ、ハリを回復することが期待されています。
 ヒアルロン酸は、2種類の糖が交互に2000~5000組、鎖状につながった高分子化合物です。皮膚、腱、軟骨、血管などの組織中に広く分布しており、 関節では骨の間の潤滑作用を担っています。コラーゲンと違うことは、単なる構造材料ではなく、細胞の成長や移動に重要な役割を果たしていることです。
 関節炎の治療で、ヒアルロン酸を関節内に注入することが、20年前から広くおこなわれています。当初は、ニワトリの鶏冠(とさか)から製造していたため 高価で、医薬品以外は高級な化粧品にしか使われませんでした。その後、細菌を培養して大量に製造する方法が普及し、利用が拡大しました。

Q:補助食品として飲むのは?

A:内服については、乾燥肌に対する小規模な試験で、1日120mgを4週間服用したところ改善効果がありました。しかし、有効性・安全性ともに、十分な研究データは蓄積されていません。
 コラーゲンと同様に、ヒアルロン酸も高分子であるため、そのままの形では腸管から吸収されません。消化され断片となって、初めて吸収されます。細胞膜で の合成にあたって、部品の単糖から鎖状につないでいきます。食べたものは、単糖まで分解されないと活用できません。
 ヒアルロン酸を構成する糖は、特殊なものではありません。普通に生活していれば体の中で作られます。ヒアルロン酸を食べても、原材料となる糖の量を増やすだけです。
 40歳をすぎると、年齢とともにヒアルロン酸が減少するという説明が、消費者の不安をかきたてています。確かに、加齢とともに減少する生体成分は気にな ります。しかし、たくさんある成分の一部だけ補充することでバランスを壊すことにならないか、利用にあたっては注意が必要です。

Q:内服では安全性に疑問がある?

A:医療の面でヒアルロン酸が有名なことは、「腫瘍マーカー」であることです。ある種のがんでは、がんの増殖と転移の時に血液中のヒアルロン酸濃度が高まります。細胞の移動に関わる活性物質として、がんの増殖を促進しているのです。
 ヒアルロン酸は皮膚に塗る分には心配はありません。しかし、このような活性物質を長期に飲み続けることはお勧めできません。
 大手の化粧品会社や製薬会社がヒアルロン酸の効用を宣伝しています。製品の品質や物質の基礎的なデータは充実していますが、人間が内服した場合の効果と 安全性に関する情報もきちんと出してほしいと考えます。

いつでも元気 2008.3 No.197

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