副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2008年5月5日

副作用モニター情報〈287〉 ワーファリンとフロリードゲルによるPT-INR(プロトロンビン時間)の上昇

 処方に医薬品が追加または変更された場合、すでに服用している薬との相互作用で副作用が生じる恐れがあるため、積極的に薬剤師が関与し、注意を喚起したり、お薬手帳を利用することが求められています。
 とくにワーファリンは、多くの薬剤とさまざまな相互作用を有し、もっとも注意が必要な薬剤の一つです。最近、全日本民医連副作用モニターに報告された ワーファリンとフロリードゲルの相互作用に関する症例を示します。

 〔症例1〕80代女性。以前より発作性心房細動で ワーファリン3.25mg服用中。PT-INR2前後でコントロール良好。口腔カンジタ症にて耳鼻科受診し、フロリードゲル経口用5g×2が処方、2週間 分服用。服用終了した翌日、両下肢出血斑、右肘の内出血に気がつき受診。PT-INR 19.53と高値、また全身に紫斑が見られ緊急入院。ケイツーN注 10mgを2日間静注。その翌日、PT-INR 1.33となりワーファリン3.25mg再開。翌日には再度PT-INR 4.06と上昇し、3mgに減 量し退院。退院8日後、PT-INR 9.91のため、1mgに減量。退院12日後PT-INR 4.16に低下したが、下肢右大腿の内出血が悪化しワー ファリン中止。中止4日後 PT-INR 1.77。中止翌日よりワーファリン0.5mgにて再開。再開4日後
 PT-INR 1.19→1mgに増量。11日後PT-INR 1.19→2mgに増量。29日後PT-INR 1.33→2.5mgに増量。44日後PT-INR 1.9

*    *

 フロリードゲル(ミコナゾール)は、肝代謝酵素CYP3A・CYP2C9の強力な阻害剤として知られ、これらの酵素で代謝される併用薬物の血中濃度を上昇させることが報告されています。
 メーカー情報によるとフロリードゲル5g/回では、血中濃度は定量限界未満です。しかし10g/回では血中に検出され、仮に少量でも相互作用が生じるこ とが示唆されています。上記2剤の相互作用によるPT-INR 上昇に関して、現在までに28件のメーカー報告があり、併用開始後約2週間で発現する傾向 が明らかになっています。フロリードゲル経口用の添付文書上では、ワーファリンとは「併用注意」となっており、見逃されがちです。
 また、他院・他科受診で処方されがちな組み合わせであり、婦人科受診について患者さんが話したがらないことから、副作用に対する対応が遅れ、重篤化する可能性が危惧されます。
 ワーファリン服用時は、定期的な採血による安全性の確認だけでなく、相互作用のチェックを徹底するために様ざまな情報確認手段を駆使し、併用薬の確認を実施するようお願いします

(民医連新聞 第1427号 2008年5月5日)

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