副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2008年5月19日

副作用モニター情報〈288〉 テルミサルタン(降圧剤/アンジオテンシンII受容体拮抗剤)と肝機能障害

 B型肝炎・肝硬変を基礎疾患にもつ患者にルミサルタンを使用し、肝機能障害の副作用が疑われる報告がありました。

 〔症例〕70代女性。テルミサルタン20mg服用 開始時の血液データはASTが134、ALTが115、ALPが1249、血小板数2.3万個、T-chが137。服用34日後にはASTが457、 ALTが335まで上昇。その数日後、抗ウイルス剤エンテカビル0.5mgを服用開始。55日後に吐き気などのためテルミサルタンを中止。この日の血液 データはASTが126、ALTが130。数日後、吐き気はエンテカビルが原因と診断され、ラミブジン100mgに変更。その後、肝機能は落ちついた。

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 この症例は、薬剤の中止時期と検査値の推移、併用薬の関係で、副作用の「可能性あり」に分類するのは難しいのですが、テルミサルタンが蓄積し、それが引き金となって肝炎の活動性が上昇、投与中止で肝機能が回復した、と推論できます。
 テルミサルタンは、ほぼ100%が胆汁排泄、代謝には飽和があり、一部がグルクロン酸抱合を受け、未変化体は再吸収され腸管循環します。40mg/日の投与で蓄積が確認され、常用量でも急激な血中濃度上昇が起きる危険性があります。
 蛋白結合率は99%以上で、肝硬変でありがちな低アルブミン血症では、遊離体が多くなります。その場合、蓄積量が少なくても、薬物の活性が上昇します。また、性差や食事による影響も受け、用量が少なくても血中濃度が急激に上昇し、中毒を起こす可能性があります。
 このようにテルミサルタンは薬物体内動態の予測がつきにくい薬物です。投与量が少なくても蓄積による副作用を常に考慮する必要があり、それを示す症例でした。

(民医連新聞 第1428号 2008年5月19日)

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